ゴブリン退治
僕たちはトラキアからマケドニアに入ったところで、ゴブリン10匹程度が商人の荷馬車を襲っているのを見つけた。
「アプロディーテ!助けるよ!」
「ちょっと待てください。ゴブリンはスキル持ちが多いです。まだ今のパリスさまには荷が重いです。」
「でもほっておくわけにはいかないよ!」
「わかりました。では危なくなったら逃げてください。」
どうやら護衛の冒険者が奮闘した後で、すでに十数匹のゴブリンの死体が転がっている。そして息絶えた冒険者。
生き残ったのは商人のみ。それも時間の問題…
「ゴブリンは繁殖力が強いからか、味方の被害が大きくなっても逃げません、自分たちが全滅するまで獲物を襲います!
あの剣を持っている1匹が【剣術】を、あちらの2匹が【棒術】を持ってます!それ以外は雑魚です!」と走りながらアプロディーテが言う。
「じゃぁ、【剣術】と【棒術】を奪おう!」
そして【剣術】は奪うことができたが、【棒術】は失敗した。
――――――――― ステータス ―――――――――
名前:パリス 年齢:15歳 種族:人族
ジョブ:審判
スキル:
・幸運:転生者ボーナス。少し運が良くなる。
・裁定 レベルMAX:審判の固有スキル。審判が下した裁定に誰も異を唱えることができなくなる。
・索敵 レベル2:羊飼い固有のスキル。
外敵の存在・大体の位置を察知することができるパッシブスキル。レベル2で200m程度。
・回復速度向上 レベル3:
HPやMP回復のスピードがアップするパッシブスキル。
レベル3になると眠らなくてもHP・MPが大幅に回復する。
・暗視 レベル2:暗闇で物体を見ることができるパッシブスキル。
・無限収納:物を無限に収納できる。生きているものは収納できない。
収納した物の時間は停止する。
・スキル移動 レベル2:MPを消費し低い確率で人のスキルを他の者に移動させることができる。
固有スキルは移動できない。
・縮地 レベル2:MPを少し消費し一瞬で移動できる。レベル2だと10m程度が効果の限界。
・剣術 レベル1:剣の扱いが上手くなる
装備:
・初心者の剣
・革の胸当て
・冒険者の兜
――――――――――――――――――――――――
「相手のスキルはあのゴブリンの【棒術】だけだ!あの2匹だけ気を付けて。じゃ行くよ!」
「はい!」
アプロディーテが鞭でゴブリンの剣やこん棒を打ち落とす。
そして僕は武器を失ったゴブリンの首を刎ねる。
あとはひたすらそれの繰り返しだった。
初めて人型の魔物との戦闘だが、意外と体は動いた。緑色の血を見ても平気だった。いやアドレナリンが出まくっているせいか?
でも、やっぱり返り血は浴びてしまうんだね。僕はゴブリンの緑の血でべとべとだ。初めて人型の魔物を切ったが、意外と忌避感はないが、落ち着いてみると緑の血は気持ち悪い。
気が付いたら戦闘は終わっていた。それにしても、着替えをたくさん持っててよかった。
「冒険者様、ありがとうございます。私はテッサロニキの商人のセルジオスと申します。護衛の冒険者がやられてしまい、私たちも命を落とす寸前でした。
生憎、お礼にお支払いできる持ち合わせがありません。マケドニアのテッサロニキの私の店まで行けばお礼をお支払いできるのですが…もしよろしければテッサロニキまでご同行いただけませんか?」
「パリスさま、テッサロニキまで護衛してくれってことかと。」とアプロディーテが僕に耳打ちする。
「はい。ではご一緒しましょう。」
そして、「まぁ、通り道だし。旅は道連れ世は情け、一緒に行こうよ。馬車に乗せてもらえれば楽だし。」とアプロディーテに小声で返した。
「オークなら肉も売れるんですけど、ゴブリンではあまり高く売れないのですが」と、セルジオスは次々と俺が倒したゴブリンの右耳をナイフで切り落とし、切り取った右耳とゴブリンが落とした武器を俺に渡してきた。
「えっとこれは?」
「冒険者様が倒したゴブリンの討伐証明部位の右耳です。安いとは思いますがテッサロニキの冒険者ギルドで売れます。
ゴブリンの武器はおんぼろですので不要でしたら私の方で処分します。放置しますとまた別のゴブリンが拾って武器にしかねないですから。
私の護衛の冒険者が倒した分の討伐証明部位は、亡くなった冒険者の遺族へ渡すお金にさせてください。」
「あ、はい。ありがとうございます。ありがたくいただきます。いらない武器も引き取ります。僕たち、何も知らなくてすみません。」
といいながらアイテムバックに偽装した【無限収納】にしまう。
「いえいえ、冒険者様はアシアの方では?あ、失礼しました方言がアシアのギリシャ人の方っぽかったので。」
「あ、はい。イリオス出身です。それと冒険者ではないんです。」
「失礼いたしました。ここトラキアや東のアシアでは冒険者ギルドなんてありませんからね。知らないのも無理はありませんよ。
マケドニアは他のギリシャのみなさんからは蛮族なんて呼ばれていますが、テッサロニキはイリオスほどではないかもしれませんが大きな町で、周辺には強い魔物から弱い魔物までたくさん居て程よい距離にダンジョンなんてものもありますし、何よりワインの名産地ですので酒好きな冒険者が集まる賑やかな町なんですよ。
私はテッサロニキの隣村出身で、テッサロニキで店を構えて冒険者相手に商売をしていまして、今回はトラキアで仕入れをして帰る途中だったのです。」
へぇ~。冒険者が集まる町か、面白そうだな。ダンジョンも興味あるなぁ。
「それにしてもイリオスは海がきれいないいところらしいですね。私も一度行ってみたいと思ってるんです。」
「ありがとうございます。とてもいいところですよ。一度いらしてください。」
定番展開ですね。