序章 一、
序章
一、
妖精の粉に、輝く樹液の娘。白い闇はナザレの故郷を継いで、揺蕩う湖の畔を祈る。琥珀の世界が戦慄のヴィオラを奏で、私は何れかの宿命を得ることだろう。鍵では開かない宝箱に、白鹿のブリキ心臓を捧げる姫君よ。絵本の中では立体望遠鏡も魔法使いの戒めとなる。
「そして、最愛の蛙がキスから受けた誓いを携えて、遥か10数億光年先の妖精に、祝福を与えることでしょう。三千世界の柄杓を望んで、少女は宇宙を飛び立ちました。ウイスキーボトルに月の炭酸水を、小惑星もしくは流星群と呼ぶように。数多の人生を、その身に飾り付けたのです。」
続きの文章を綴ろうとして、手を止める。ふと視線を移すと、銀の妖精が涼むように窓辺で青空の雲に手招きをしていた。
「次の絵本には、妖精も登場させようかな。鍵が掛かった妖精の話を...。」
呟いてから、目をゴシゴシと擦る。魔法の粉が弾けたかと思えば、銀の妖精は笑い声だけを残して消えていった。後には、カーテンを揺らす優しい風。手に掴んだら、心まで空色に消えてしまいそうな、晴れの日が続いていた。
「少し、眠くなっちゃったな。」
独り言を呟いて、何気ない欠伸をする。手に持ったままだったペンを机に置き、傍にあるベットに体を転がした。朝、ベットメイキングされたばかりの布団は、ふわふわで心地がいい。
「...。」
枕を抱えて窓越しの空を見上げれば、何処までも行けそうな気がした。きっとあの雲の袂にはレプラコーンの住処があるのだろう。指輪物語のホビットも顔を顰めて歩いているに違いない。謎に秘められた宝箱。タイムトラベルする亀。名前も無い子供が花売りに祝福を与えているのかもしれなかった。
「お昼寝なんてしたら、夜眠れなくなってしまうかもしれないけれど。これほど素晴らしい午後に、夢見ることがどうしていけないと言うのかしら。」
既に微睡みを覚える瞼。細い針金の金粉が、目元に散らされ、遥か先の世界へと誘われる。発光するASTROPHYSICS。船団の二重奏歌は、狼を癒す月光を促すだろう。私は掴めない破片を、鏡と継承する夢へと目を閉じたのだった。
また新しい連載小説を始めました!これで、三作目になるのかな?
基本的には一週間に二回。月曜日と金曜日の投稿です。
夢見る絵本作家の少女と婚約者の男性。そして、フルート奏者の青年によって織りなす船旅を、ぜひお楽しみください!