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旅行記ダラン  作者: 未定
第一章 故郷と幼い友人達
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09 理想の出発点

 小学校の作文を思い出した。

 将来の夢という漠然としたテーマに、困った覚えがある。

 あの時の俺は、なんて書いたのだろう。


「どう、生きる…ですか…?」


 唖然とする俺を放置して、床から椅子に戻っていく。

 莫大な新しい情報を、頭が処理しきれていない。

 この世界で学んだ常識が、頭の中で崩れていく。


 戦争の勝者が、歴史を都合よく書く話は聞いた事がある。

 しかしこの世界の戦争の勝者は、魔法使い達だ。

 俺が知っている常識は、何故こんなに魔法使いに優しくないのか。


 それとも色々な性格の人間がいるように、魔法使いも極悪人や普通の人、善人がいるのかもしれない。

 少なからず、ノクスと名乗る魔女は無害そうに見える。

 汚部屋生産機で、空気は読めないが。


「ノクスさんは、どう生きているんですか?」


 かなり逃げに走ったが、行き詰ったのだからしょうがない。

 作業を止めて、赤い瞳がこちらに向き直る。

 彼女は育ちがいいのかもしれない。


「私は、好きな事だけして生きたい。」


 就活間近の大学生みたいな事言ってる。

 悪びれる気も、冗談めかした雰囲気もゼロだ。

 清々しいくらい、堂々としている。


「長生きはしたいけど、したくない事ばかりして長生きしたんじゃ意味がない。」


 だから部屋も汚いんですか?と声に出したかったが、口を噤む。

 とても賛同できるのに、自信を持って同じ事を言えない俺がいる。

 感じなくてもいい敗北感すら感じる。


「だから魔力は、私の為だけに使いたい。」


 聴かれた事が解った気がする。

 魔法使いにとって、生きるという事は、どう魔力を使うかという事なんだ。

 身体に巡るエネルギー(魔力)をどう活かすか(とどう生きるか)


「君が魔法使いじゃないというなら、そう生きればいい。」


 今まで通り、魔力を持たない者として。


「この村で生きてもいいし、魔法使いの国に行っても良い。」


 街に行きたかったのは、生活の向上の為だ。

 魔力を知った今、この村でも願いは叶う。


「誰かの為に使っても良いし、誰かの為に使わなくても良い。」


 魔法使いに対する、恐怖や嫉妬が蔓延している。

 使わない事で己を守り、使う事で誰かを救うかもしれない。


「君は何にでもなれるし、なんだって出来るよ。」


 心が熱くなる。

 前世で幼い頃に、母親か先生に、同じような事を言われた気がする。

 なあなあで就職して、社会の荒波に揉まれまくった俺は、青いな~とか若いな~って思うんだろうな。


 何故今更こんなに悩んでいるんだ。

 青臭いって、笑い飛ばせばいいじゃないか。


 滑稽なくらい悩んでいた俺は、気付いていなかった。

 今までの俺は転生したのだと、1度目の人生の延長を生きていた。


 しかし間違いなく、この瞬間。

 俺は、2度目の人生を歩み始めた。

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