傷跡をひらく事が楽しい
傷跡がひらいていく。
血が流れだして、痛々しい。
普通なら目をそむけたくなるだろう。
でも私は、それがいい。
傷跡をひらくのがやめられない。
私は笑いながら、言葉の武器を使って傷跡をひらいていく。
「どうして役立たずなのに生きてるの?」
「もう少し頑張ったら?」
「周りの人間に申し訳ないとは思わないの?」
ひらかれた傷跡は血をだらだらと流れ出し、黴菌が入って膿んで悪化し、ぐちゃぐちゃになって、見るもたえない状態になっていく。
「もうやめて」
「これ以上言わないで」
「お願いだからかまわないで」
そんなわけにはいかない。
これ以上楽しい事なんてないもの。
人の傷跡をひらいて、追い詰める事以上のものは。
「あはははは!」
だから私は今日も、弱者に罵詈雑言を投げかける。
いなければ、いなくなったら、存在しないなら。
探して、追いかけて、つくりだしながら。
ああ、楽しい。
なんて素敵な生きがいだろう。
私はきっと人間ではない。
なら何かと言われると昆虫が思い浮かぶかしらね。
だって、人の不幸は蜜の味に感じるもの。