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花橘ノストラジア  作者: 東寺 唯
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花橘ノストラジア(仮)

拙い文章ですが書いて見たかった世界を少しずつ描いていけたらとおもいます

それはどんよりとした空だった。

黒みがかった重たい色だった。

今にも泣き出しそうだと感じた。


ぽたり、ぽつり、と落ちた雫。


やはり降ってきたのだと思った。


でもそうではなかった。


滲む映した(まなこ)からだとわかった。


頬を伝い落ちる雫、それはたくさんたくさん流れた。


灰色の世界から戻した世界に映るは、大きな背中。


黒い布を纏しそこにはぬめりを帯びた赤黒いもの。


その眼に、その奥に焼きついた背中。


身体は炎のように見え、そして更に滲んだ。


ふぅ、と、その姿の主は吐いた。


その背中に手を伸ばした。


零れいく雫は止めどなく落ちゆく。


抱き留めた世界はまだ温かかった。


悲しい。


悔しい、と押し殺すように声を上げて。


どろりと沼に沈んでしまう感覚があった。










ただあなたに逢いたい。


もう一度。


そう願った、ような気がした。








***



「姉ちゃん、もう起きないと時間がないよ」


重たい眼を開いた途端に差し込む光と呼び戻すかのようにかけられた声に身体は跳ね起きた。



「小出先生のとこに行くんでしょ、ご飯できてるから早く起きて!」



「うう、あー、そうでした」


半ば動きにくい身体を、絡みつく髪を掻きながら布団をよけベットから動き出す。


「ここのところ忙しそうだもんね、姉ちゃんの好きななめこの味噌汁作ったよ」


制服姿の子が近づいてきた。


「ありがとう。…ごめん、今日朝ごはん当番私なのに」


眠い眼を擦り重たい息を吐きながら答えた。


「壮一郎」


名前を呼ぶ。


「なあに」


屈託のない素直な笑顔を向ける壮一郎という少年。

それは弟であった。


「今日先生の手伝いで遅くなるよ、義彦と奏多と一緒だから大丈夫、心配しないで、」


「…うん」


ふわふわとした意識の中答える。

先程まで感じたものはなんだったのかと


「寿々姉ちゃん」


宥めてるかのような優しい声の主は名を呼ぶ。

長い髪を後ろで結びながら寿々は壮一郎の方を見た。


「また、今日も見たんだね」



先に部屋から出てリビングに向かった壮一郎は一瞬躊躇うように言った。


「…うん」


寝間着のシャツを脱ぎながら答えた。


「…前世のゆめ、だね、おんなじ」


壮一郎は続けた。


「…前世」


視線をやったその先に机の上に置いてあるピアスが見えた。


小さな鈴が二つ付いたピアス。


それに手を伸ばしつけた。











ありがとうございました!

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