第七話 リリアを助ける為に
僕とマルスタンは地面の跡と
血の跡を頼りに
ゴブリンを追いかけていた。
もうどれだけ歩いただろうか。
陽が傾き、夜になっていた。
暗くなったことで
森の獣道に入る痕跡を境に
手がかりを見失ってしまった。
「クソ、この道であってるのか?」
マルスタン
「大丈夫、行くしかないだろ。」
最後の痕跡に残された方角を頼りに、
なんとか血の跡が続く洞窟の入り口に
辿りつく事は出来た。
山の奥の方はうすく明るくなってきている。
結局、一晩歩き続ける事になってしまった。
マルスタン
「あそこだな。行くぞ。。。」
ヘクトール
「ああ。急ごう。」
ゴブリン達は
どれくらい前に着いたのだろうか。
恐る恐る洞窟へと足を踏み入れると
洞窟の奥からは明らかに異臭が漂ってくる。
肉の腐った臭いだろうか。
耳障りな蝿が飛び回り
この先に待ち受ける物が
どう言うものか、僕は覚悟した。
マルスタン
「ゴブリンの巣に入るのは初めてだ。
きをつけろよ。
何があっても、覚悟をしろよ。」
「ああ。わかった。」
奥に進むにつれ、異臭が更に強くなる。
喉からこみ上げる物を必死で
こらえながら、先へ進んでいると
道が二つに別れた。
マルスタン
「臭いのはこっちだ。人が集められてるのは
こっちかもしれない。」
彼の意見を信じ左の穴を進む。
既に手探りでなければ進めないほどの
暗闇になっている。
都合よく壁にかけられた松明を手に取り
奥へ進む。
「ゴブリンは火が扱えるのか。」
マルスタン
「別に、普通じゃないか?」
「想像してたのは
石器を使うだけだと思ってたから。」
マルスタン
「さぁ、俺にはあいつらの事は
よくわからんが。
偵察に来ているような素ぶりがあったり
意外と賢い奴らなのかもしれないな。」
数分ほど歩くと不意に行き止まりに当たった。
その先には赤白いものがたくさん転がっていた。
マルスタン
「うぉ。」
地面を埋め尽くす赤と白は
肉を削ぎ落とされた
大小さまざまな骨だった。
この骨は恐らく、人の骨だ。
頭部は皮を剥がれ、目玉も抜かれている。
頬にはまばらに肉が残り、血が滴っている。
見るだけで10人以上の人骨がある。
古く黒ずんだものや、
血が乾いていないものまである。
隅には着ていたであろう服が
ぐちゃぐちゃに積まれている。
強烈な臭いとともに
二人は喉からこみ上げる物を
抑える事が出来なかった。
ヴォエエエェ。
鼻がおかしくなりそうな程の腐臭と
夥しい量の蝿が飛び回る凄惨な場所だった。
「行こう。
この人達の為にも。」
マルスタン
「あぁ。急がないと俺の嫁も、
リリアもこうなっちまう。」
僕らはリリアとマルスタンの奥さんを
取り戻す為、もう一度来た道を引き返す。
ゴブリンは人を食べる。
この状況を見れば
これは疑いようのない事実だ。
一体この先に
何匹のゴブリンが待ち構えているのだろうか。
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