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第四話 男の名はヘクトール

「うーん。」


僕は結局広場のベンチで

横になり夜を明かした。


朝になって小鳥のさえずりが聞こえてくる。


「あったかい場所でよかったな。

とりあえず野宿はできる。」


ベンチから身を起こし、

今後について考える。


「色々とショッキングだったけど、

少しだけ状況は掴めた。

とりあえず元の世界に戻る為に情報を

集める必要があるか。」


腰についているカバンを取り出し

中を確認してみる。



「小麦の袋と、革の水筒、そしてナイフ、

金貨が五枚、それにこれは。。。」


見つけたのは身分証だった。



「ヘクトール・ブリアモス…」


カバンにしまわれていた

身分証を見てこの見知らぬ金髪の男の

名前をしった。


「やっぱ読めないはずの

異世界の文字、

読めるんだな、本当に。」


男の名はヘクトール・ブリアモス

冒険者として活動していた男、

という事はわかった。

生まれ故郷は

オルレードという場所で

クレモンテのギルドで

冒険者登録をしていた様だった。



「こいつは俺が入る前まで

実際に存在していて、冒険者として

活動していたって事なのか?」


ポリポリと

こめかみを掻きながら考えた。



「とりあえず、

村の人にこの二つの場所を聞いてみて、

近いところから行ってみるか。」



とりあえず

話しやすそうな人を探してみて、

色々と相談してみよう。

明るくなってきたし、

だれか外に出てくるかも。


立ち上がって

村を歩き始めた。




どの家も山小屋の様な

板で作られた

簡素な家だ。


電線の様なものは見当たらない。

電気がまだ来ていないのだろうか。


家には家畜の小屋があり

農具や、藁の様な物も

置かれている事から

小麦か米みたいな

穀物を作りながら

鶏や羊を飼って

生活している様だ。



そうして、村を見渡していると

昨晩、この村について

教えてくれた女性が家から出てきた。


「すいませーん!

昨晩はありがとうございました!」


村人の女性

「あら、昨晩の。。。

道に迷っていたみたいですけど、

目的地には行けそうですか?」


「それが、記憶喪失で

全く地理がわからなくて。。。」


村人の女性

「記憶喪失?」


「はい。全部忘れてしまったんです。

だからこの世界の事も

よくわからなくて。」


村人の女性

「じゃあ昨晩はこの村で

過ごしていたんですか?」


「はい、ちょっとそこのベンチを

拝借しました、すいません。」


村人の女性

「そんな。。。

村の中とはいえ、危険ですよ。

この辺りには空を飛ぶモンスターも

現れます!」


「も、モンスター?」


村人の女性

「モンスターの事も忘れてしまってるの?」


「残念ながら。。。」


村人の女性

「この辺には魔物化した熊やカラス、

ゴブリンも見かけたって人もいるわ!」


「え。。。

じゃあかなり危なかったのか。。。

でも今は頼れる人もいないので、

どこか近くの街まで歩こうと思うんですけど、

この辺に街はありますか?」


村人の女性

「無理よ!最寄りの街が北東にあるけど、

馬で10日位はかかるわ。歩いて行くなんて

記憶がないままじゃ危険よ!」


「困ったな。

そんなに遠いんですか。

ではとりあえず

宿を探そうと思うんですけど、

宿屋さんはこの辺にありますか?」


村人の女性

「残念だけど、この村に宿屋はないわ。

それなら、準備が出来るまで、

私の家に

空き部屋があるから

使っていいわよ」


「え!ありがとうございます!

でも、いいんですか?」


村人の女性

「子供がうるさいかもしれないけど、

それでも構わないなら、使っていいわよ。

あ、それなら、村長に

挨拶に行った方がいいかもしれないわね。

いつもくる商人のかた以外、

滅多にこの村には人が来ないから。」


「わかりました!

村長さんの家はどちらですか?」




僕は優しい女性に言われた通り

村長に挨拶に行った。


記憶喪失の事で

怪しまれないか不安だったけど、

優しい村長さんだった。


この村には本当に滅多に人が来ないみたいで、

他にも数人の村人が集まってきて話をした。

みんな客人として、

もてなしてくれると言う。

村で取れる野菜を

ぜひ食べてくれと

お土産まで持たせてくれた。


「ある意味、この村でよかったな。

みんなすごくいい人だ!」



そして、ひととおり話を終え、

先ほどの女性の家にお邪魔した。




村人の女性

「あら、村長への挨拶は終わりました?」


「はい!すごくよくしてくれて、

野菜まで頂いちゃいました!

他の方ともお話しできました!」


村人の女性

「この村は人が少ないから、

助け合って行かないと、

生活もままならないから。

助け合いは自分の為でもあるのよ!」


「なんだかすごく、あったかくて、

素敵な村ですね!

そう言う事なら、

泊めてもらってばかりでは悪いので、

明日はぜひ、何か手伝わせてください!」


村人の女性

「それなら少し

お願いさせてもらおうかしら!

そういえばあなた、

名前はおぼえてるの?」


「僕はヘクトールです。

身分証を持っていたので

多分そうだと思います。

お姉さんは?」


村人の女性

「リリアレットよ。リリアでいいわ。」


「ありがとうリリア。

本当に助かりました!」



僕はリリアと、その子供達と

食卓を囲み、他愛無い話に花を咲かせた。


彼女は去年、旦那さんを

畑の作物を盗んでいたゴブリンに

殺されたらしい。


僕に貸してくれた部屋は

なくなった旦那さんの部屋だった。


ガランとした部屋の机に

旦那さんの着ていたであろう服が

綺麗に畳んで置かれているのが

なんだか物悲しくて、印象的だった。



そして初めて元々着ていた

防具を脱いだ。

ベルトが多く、なかなか大変だったが

なんとか着ることも出来そうだ。


革の鎧は

ハードレザーと呼ばれる、

革を特殊な液で煮て硬く仕上げた

高級な物らしい。


黒く染められているのも珍しく、

裕福な生活をしていたのではないかと

リリアは教えてくれた。


本当に色々な事があって

混乱したけど、優しい人に出会えただけで

救われた気がする。


もし元の世界に帰れないなら

このままこの村で過ごしてもいいとさえ

思えた程だ。


明日からは出来る限り

女手一つで子供を育てている

リリアの手伝いをして

少しでも恩返しをしていこうと思う。


本当にこの村は素晴らしい。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


いかがだったでしょうか?


もし面白そうだなと感じていただけたら


ぜひブックマーク、評価ボタン、

感想などいただけましたら嬉しいです。


ぜひよろしくお願いいたします。

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