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ダブり集

送り盆

作者: 神村 律子

 今日は送り盆。


 全国的なお盆休みも今日で終わり。


 のところが多いはず。


 私の周りの人々も、皆今日で帰る。


 私も今日で戻る。


 帰りは橋のところで大渋滞なのだろうな。


 でも帰るには、あの橋しかないから、避けようがないし。


「私はまだしばらく帰らないんです。彼岸過ぎに帰ろうかと思います」


と隣の糸川さんが言った。


「いいですねえ、羨ましいですよ。妻が五月蝿いので一緒に帰るしかありません」


「ハハハ、私はむしろ妻に疎まれてますから、先に帰らせます」


「ほォ」


 糸川さんは苦笑いをして、


「実は娘が心配なんです。どうも夫婦仲がうまくいってないみたいで」


「なるほど。旦那さんが冷たいのですか?」


「いえ。遺産相続で、向こうの親族と揉めているんですよ。で、間に立たされた娘が辛い思いをしているみたいなんです」


 私は立ち入った事を聞いてしまったと思い、話を切り上げた。


「それでは失礼します」


「はい」


 私はこちらを遠くから睨んでいる妻のところに行った。


「話し込むと長いのは相変わらずなんだから」


「仕方ないだろ、しばらく帰らない人なんだから。それに遺産相続で揉めてるみたいだよ」


「まァ」


 妻はビックリして糸川さんの方をチラッと見た。


「そんなにお金持ちだったの、糸川さんて?」


「ああ、そうみたいだな」


 私は歩き出しながら、


「死んだら楽になるかと思ったが、気苦労は絶えないな」


「そうね」


 私達は送り火の中、天国への道を登った。


「早くしないと、また三途の川の橋が渋滞するわよ、貴方」


「ああ、そうだな」


 私はもう一度我が家を見た。


「今度は彼岸に会おうな」


 庭ではしゃぐ孫達を見て、そう呟いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] これは最初から読めました。 「橋」が出てきたところですね。 でもいいお話ですね。 僕の亡くなった父も、こうして見守ってくれてるかなぁ。 素敵な時間をありがとうございました。
2011/01/31 19:52 退会済み
管理
[一言] 楽しく読ませていただきました。 ほのぼのとした終わりが気に入りました。 私も穏やかな老後、死後をおくりたいものです。 それではまた来ます。
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