第5話
食事が進むに連れて、妹がとあることに気が付いた。
「これ何?」
それは、皿を五枚入れると当たり外れのあるクジだった。
お茶用のお湯を出す蛇口の横に食べ終わった皿を回収するのに、ガチャガチャのカードダスのような細い入り口があり、そこに五枚入れる度に当たり外れがタブレットに表示され、無事当たりが出ると寿司屋オリジナルの小さいおもちゃが出ると言うものだった。
俺もこう言うものがあることは聞いたことがあるのだけれど、実物は初めて見たので、曖昧模糊とした説明をしてやる。
「へぇー」
ここに来て、妹の表情が輝きを帯び始める。やはりそこは子供なのだろう、こう言ったゲーム要素に興味を示したようだ。
反応が薄いから緊張からか斜に構えているように見えたのだが、分かりやすく興奮して来たなってのは伝わった。
かく言う俺もこのシステムは初めて見たので、面白そうだと少しだけ童心に返っていた。
「やってみろよ」
言い方がヤンキーみたいだなと思った俺を気にせず、僅か六枚の皿を流してルーレットが始まる。わくわくどきどきのクジは、どんな結末を見せるのか。
「あ」
もうその反応だけでディスプレイを見ずとも結果が見えていた。ハズレだったのねぇ。
「残念」
「もう皿ない」
残念無念。あと四枚頑張って食べたらまた回せるから。
「お兄ちゃん」
いやこっちの皿を見るな。俺も食べるの遅くて七枚しか無いから。
「回したいんなら、頑張って食べぇや」
「お腹一杯」
俺かてあと二枚くらい食べたら終了の鐘と言う名のおあいそを鳴らそうかと思ってたんだが……いや、むしろ丁度良いか。後二枚食べれば計九枚、四枚渡しても残り五枚残って、また回してやれる。
「ほれ」
皿を四枚渡して、丁度流れて来た唯一まぐろ、いくらだけ食べられる二皿を取って、喜び勇んで渡された四枚の皿をスロットインする妹。
まぁ客に楽しんで行ってもらうのが店側としての気持ちだろうし、二~三回くらいやれば当たる仕様にはなっているだろう。正直流石に胃袋がミニマムな俺としても、これ以上食べるのはキツイものがある。満足度を得るべき飲食店で、何故身を以って苦痛を覚えなければならないのだろうか。
「ありがとう」
ガチャを回してからお礼を言われて、将来大物になるなこいつと思いながらまぐろを頬張る。もうちょい食える魚介類増えたら良いんだけど、食わず嫌いじゃないから救いようねぇなぁと思ってたら、妹の顔に再び暗雲が。
外したか。意外と当たり判定渋いのかねぇ。
「お兄ちゃん」
「お前これが楽しいのか兄をリミットブレイクするのが楽しいのか、どっちだ」
あとこっち見んな。