第1話
家族構成
父親
母親
宇佐美 零耶
次男
三男
長女
両親、特に父親との仲がずば抜けて悪かった。
本当に血が繋がっているのか、俺だけ橋の下で拾われた子供なのではないかと疑うレベルで父子の間で不仲があり、幾分かはマシにしても母親とも似たようなものだった。
その中で適切な距離を保って生きて来て、何だかんだと自活出来ない俺を育ててくれた恩はあったので、アルバイトが出来る歳になったのと同時に一定額を入れて、そのまま週五で知人の家へ逃げ込んでいた学生時代。
だからこそ、大雑把とは言えそんな家庭の事情を加味したとしても、振り返ってみれば俺と一番下の妹との仲は到底仲良しとは呼べなかった。
憶測でこそあるが、精々廊下を出たら居た、飯時に見かけるなど、座敷わらしと遭遇したような感想が関の山だったんじゃないかな。
十二個下の妹。
この子が産まれた時、俺は小学六年生。妹が高校を卒業する頃には、俺は三十歳に突入するように、数字で表すと距離を感じる年齢差だ。
まるで違う世代、ましてや苦手である「子供」と言うジャンルの中で生きるこの子に、果たして俺はどれだけ優しくしてやれたのだろうか。
構ってやれたのか。
兄として居られたのか。
全くと言って良い程自信が沸かない。
時は流れ。
妹が晴れてピカピカの小学一年生になった頃、その「差」は如実になった。
当時諸事情で引越しを行い、そのおかげで長年の夢だった自室……小さいとは言え俺だけの空間を獲得したことにより、親との不仲も相まって滅多な事が無い限り家族が集まるダイニングに足を向ける機会がはっきりと無くなった。
食事は仕事終わりにコンビニで買って帰るか、家に俺一人なんだと確信した際に作る程度で、親と一緒の部屋で寝ていた妹と関わる機会は殊更減っていた。
元々テレビを見る方では無かったし、飲み物や食事は部屋に置いて、後は友達とスカイプを使って話すか、直接遊びに出かけたりとしていたため、集団になれる部屋に行く理由も気概も無い。
こんな関係性の中、ふと思わなくも無い。
妹はそんな俺の事をどう思っているのだろう、と。
漫画なんかでたまに見る、母親と一緒に遊びに来た知らない男の人、妙に優しくていやに笑顔を浮かべた将来の父親みたいな……少し大袈裟で非日常過ぎる例えに思えるけれど、結局は顔を時々忘れるような人間なのかな、と考えていた。
まぁ、考えて「いた」だけで、すぐに今日の飯何にしようと別の事をすぐに考えるくらいには重要視しておらず、はたまた仕事の合間等にふと思い浮かぶ程度の疑問だった。
取り立てて気にしなくても良い、脳のリソースを無駄にする必要は無いと処理していたのだろう、何はともあれこれから先成長して行けば兄妹なんて帰省した時に顔を合わせるような類い稀なる存在にお互い成り得るかも知れない。
俺と親が既にそうなのだ、俺たち兄妹がこうならないと言う保証はどこにもありはしない。
先は見えてる。
きっとこの子と俺は、このまま生きて行くのだろう。