顧客が本当に必要だったもの
私は何をしているでしょうか? 答えはドキュメントを書いています!
「いやー普通にクソですね」
ムカつきます、なぜコードを書き終わってからドキュメントを書いているのでしょう?
普通はドキュメントからコードを起こすモノだと思っているのですが……
とはいえ、仕事はちゃんとこなす私です、バイトでも真面目にやってる私、えらい!
カタカタとキーボードをタイプしながらお兄ちゃんのことなどを考えています、真面目……ですよね?
「お兄ちゃん、嫌な作業もきっちりこなす私を褒めてくれないモノでしょうか?」
誰も褒めてくれないのが裏方の悲しいところです、責任から逃げた宿命ってやつでしょうか?
カタカタ……カタカタ……
イラッ
いけません、単純作業に思わず苛ついてしまいました。短気なのはよくないことですね。
…………
「あーつまんない! つまんない!」
単純作業に限界が来て私は叫びました、辛いです、なんでちゃんと動いていて使ってて文句の出ないコードにドキュメントが必要なのでしょう? 保守? そんなものは未来の誰かさんに任せれば良いのです!
ま、未来の誰かさんというのが私であることも多々あるらしいですがね……
このコードの山を前に私は机に突っ伏しました。
限界が近かったのでお兄ちゃんの部屋でくつろぐことにしました、ああ、お兄ちゃんの『元』部屋ですね。
ガチャ……パタン
スーハースーハー
ふぅ……お兄ちゃんの部屋のいい感じに澱んだ空気を吸うと生き返りますね。
そうだ! ここでドキュメント書きましょう、濁った空気でやるには丁度いい案件ですね、あんな仕事を澄み渡った空気でやるなんて無駄遣いも良いところです。
私は部屋からノートPCを持ってきてドキュメントを書く作業に戻りました。
うーん、捗る!
何故かお兄ちゃんの部屋でやるとクソみた……げふん、余り気分のよろしくない仕事でも我慢できるようです、お兄ちゃんさまさまですね。
カチャカチャ……ターン!
最後の一文字をたたき込んだあとお兄ちゃんのベッドで深い眠りにつきました。
翌朝、なぜかどす黒い案件をこなしたあとのはずなのにお兄ちゃんのベッドで寝ると気分が意外とよかったのでした。
オフィスにしようかな……?
「と言うわけでお兄ちゃんの部屋の使用許可をください」
お兄ちゃんにお願いしているのでした。
「どうせ拒否権もないんだろう? 好きにすればいい、でも……できれば家捜しはしないでください! お願いします!」
お兄ちゃんの見事な土下座でした、よほど見られたくないものがあるようです。私の部屋にもたっぷりあるのでここは情けをかけてあげますか……
「ちなみに特殊なものですか」
「し、知らないなー」
何かマニアックなもののようですね……まあいいでしょう、多少のことなら受け入れるのが器の大きい妹ですからね!
「じゃ、お兄ちゃんの元部屋を作業場にさせてくださいね! どうしてもやる気が起きないときだけにしますから安心してください!」
「いっつもやる気がないんじゃ……」
「何か言いましたか?」ニッコリと言いました。
「ナンデモナイデス」
私はそうして自宅用オフィスを手に入れたのでした、めでたしめでたし……本当は面白い案件が一杯ある方がいいんですけどね……
なんにせよ、その日からわずかばかり私のモチベーションは上がったのでした。
 




