ハガキ職人って未だにいるの?
私は日記を閉じてため息をつきます。
「お兄ちゃん……もっと私を身近に感じて欲しいのですけど……何かいい方法は……」
お外に出るという選択肢があれば、もっと幅が広がるのですけれど……マンネリですね。
そういえば、今は十月、ラジオの番組改編期ですね……そうです! 今手元にradikoのプレミアムアカウントとスマートスピーカーがあります、コレはお兄ちゃんにプレゼントしましょう!
何しろ外と関わりを断ってますからね、お兄ちゃんも世間の流行なんかも気になるでしょうし、一台余ってるので丁度いいです。
私はEchoにradikoのスキルを入れてお兄ちゃんのところへ持っていきます。
「お兄ちゃん! プレゼントです!」
「なんだ世唐突に……」
お兄ちゃんは少し驚いているようですが、私は構わずそのEchoを部屋に置いてコンセントから電源を取ります。
「なんだ、スピーカーか……?」
お兄ちゃんもここに私が拉致って来る前にはスマートスピーカーのブームが来てましたからね、何かは分かるはずです。
「コレでどうしろと……」
「はい、お兄ちゃんにラジオを届けに来ました!」
「ラジオって……ここ、電波入らないの? wi-fi繋がってるじゃん?」
「はい、有線で部屋の直上にアクセスポイントを用意していますからね、4Gや野良wi-fiには繋がりませんよ?」
「うげ、マジじゃん……」
お兄ちゃんがスマホのwi-fiをオフにして通信ができるか確かめているようです、もちろん繋がらないわけですがね。
「はい、これで部屋にラジオが引けました。あ、エリアフリー機能は有効なのでご安心してください」
私は部屋の環境に合わせて設定を済ませました、なお、アクセスポイントは部屋の天井裏に設置しているので手は届きません、ちゃんと外部電波は遮蔽済みです。
「素直に外に出して欲しいんだがな……」
「何も聞こえませんなあ……?」
私はしらばっくれます。答える必要のない要望ですね。
スマートスピーカーに通話機能は無いので、お兄ちゃんの部屋に置いても全く問題ありません。
「あ、そうそう!」
私はわざとらしくお兄ちゃんにご褒美をひけらかします。
「もしお兄ちゃんがおとなしくしていてくれたら……」
お兄ちゃんも神妙な顔をして聞いているようです。
「何かくれるのか?」
「部屋にフェムトセルを設置することを考えますよ?」
「分かったおとなしくしてる」
お兄ちゃんは秒で快諾してくれました。フェムトセルとは固定回線から4Gの電波をやりとりできるモノです、要するに自宅に設置できる超小さい基地局ですね。
お兄ちゃんが快諾してくれたので私は部屋を出ました。
『考えて』おきますと言いましたからね、ちゃんと考えておきましょう、まあ結論は決まっているのですが形式上考えた振りをしなくてはなりません。
…………
よし、断りましょう。
上記の三点リーダー四つ分考えた末の結論です。ちゃんと考えましたから問題ありませんね。
そうして私は新しく一つ決断をして自室に帰りました。
 




