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妹とO(n^2)

「ふむ……HHKBプレゼントですか」

 私はあるウェブサイトを見ています、そこにはプログラミングコンテストで上位入賞者にPFUがHHKBを配ると書かれてあります。

「もう……持ってるんですけど……もう一台……」

 正直なところハイエンドのキーボードを壊れるまで使うのは至難の業なので、現在私の手元にはHappy Hacking Keyboardの最上位モデルがあります。

 持っているモノをわざわざもらう必要があるのかと言うことではあるのですが……

「欲しいですね」

 そう、欲しいんです。何故って三万円以上するモデルですからね! ただでもらえるなら是非ゲットしたいところです。

 某マッドサイエンティストをまねてドクターペッパーを飲みながら気が付いたら登録ボタンを押していました、コレは不可抗力ですね……

 ここはお兄ちゃんに頼ってチート……と行きたいところですが、順位がつくだけならともかく、結構な額の景品があるのにチートをするのはよくないですね。

 私はこれでも嘘はつくけど詐欺はしない主義なのです。

「アンチョコを暗記しておきましょうかね」

 私は有名なアルゴリズムイントロダクションを開きます、覚えて……覚え……すぅ……

 おっといけない、あまりの難解さについ睡魔に負けるところでした。

 しかし、なぜ名著と呼ばれるものがこんなに無味乾燥なのでしょう? べつに本文にジョークを入れてもいいと思うのですが……

 実際アルゴリズムを紹介する『不真面目』な本は普通にジョークが混じっています、例えば名著と名高いリーダブルコードとか……

 私はアメリカ人特有の技術書に混ざっているジョークが好きなのですが少数派なのでしょうか? アレ結構面白いんですよね。

 ジョークではないのでしょうが一番笑ったのはプログラマが知るべき97のことに載っていた『見られて恥ずかしいデータは使わない』の『等身大ビルゲイツ型マッサージロボット』というパワーワードがツボに入って笑いをかみ殺したことがあります。

 いけませんね、退屈するとつい本筋から離れてしまいます。

 面倒なソートやCならlong longにギリギリ入るかというサイズの数字を扱う問題は嫌いです、でもユーザーがあり得ない入力を平気でするという悪夢そのものを考慮する必要がないのはプログラミングコンテストのいいところです。

 ええ……本当にありがたいことです、HTTPのリクエストに平気でフォーマット文字列やエクスプローイットが入ったりはしないわけです、現実の方は……お察しでしょう。

 私は貪欲法の項目を流しながら基本的なことを抑えておく、意外とこの総当たりというか力業で攻略できる問題は多いのです。ときどき計算量が多すぎて間に合わない問題もありますが。

 一回どこまで無駄な処理を削っても実行時間オーバーで落とされた問題があります、なんとその問題の解答を読むとほとんどそのままをC++で実装していただけでした、Pythonで書いたというだけで落とされたわけです、ムカつきますね。

 チリリリ

 おっとお兄ちゃんに食事を届けないと……

 私は焼き魚とお味噌汁、ご飯とハンバーグをレンジに入れて温めます。

 温まるまでにアンチョコからお決まりの問題にヤマをはります、運が悪ければ何の役にも立たず記憶から押し出されますが、当たればコピペのごとく本の擬似コードを書き下すだけでポイントが手に入ります。

 タンタンとお兄ちゃんのところへ向かいながら、もし当選したら今使っているマジェスタッチはお兄ちゃんにお古として差し上げましょう。

 きっとお兄ちゃんなら尊い私のお古なので大事にしてくれるでしょう……

 カチャ……ギィー……

 ドアをいつもの通り開けるとお兄ちゃんが私を迎えてくれました。

「お兄ちゃん、こんばんは。これ夕食です、一緒に食べたいところですけど私はやらなきゃいけない用事があるので今日は退きますね……名残惜しいですけど」

「そうかい、ところで……俺がいた部屋の机の抽斗三段目の荷物を整理しておいてくれるか?」

「へ?」

「言ったとおりだよ『三段目』な。出てきたものは好きにして良いぞ」

 私は奇妙に思いつつも部屋を後にしてお兄ちゃんの元部屋へ行きます。

 ええっと……三段目?

 机には脇にひきだしがついています、ごく一般的なモノなのですが……いかんせんお兄ちゃんは使い方が荒っぽいのでゴチャゴチャしています。手間なので漁るのは後回しにしていたのですが……

 少し面倒ですけどお兄ちゃんのお願いですからね。

 細々とした電子部品や工具、USBフラッシュメモリ、後はマウスとキーボード……あれ?

 私は見覚えのあるキーボードが目に入りました、真っ黒一色なキーボードの左上には見覚えのあるHHKBのロゴが入っていました。

 つまるところはお兄ちゃんも持っていた、そういうことです。

「もう……プレゼントくらい素直にくれれば良いんですよ……」

 私は面倒な性格をしているお兄ちゃんを少し恨みながら、お兄ちゃんが愛用していたであろうキーボードを部屋に持って帰るのでした。

 なおコンテストには不参加でした、お兄ちゃんにお古をあげるかお古をもらうかの違いはありましたが結果的にはこれでよかったのでしょう……私は本棚に分厚いアンチョコを戻しました。

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