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妹とPPAP

「さすがアメリカですね、日本も見習ってほしいものですが……」

 私はあるニュース記事を見てため息をつく。

 そのニュース記事は暗号化zipファイルをブロックするというものです。

 マルウェア対策としては当然なのですが、未だに暗号化zipがはやってますもんねぇ……

 そう、暗号化zip、どれだけ無意味と叩かれてもセキュリティに気を使っているという『ポーズ』のためだけになくならない悪習です。

「某ドラマなんてアルファベット小文字の六文字でしたからね、フィクションにしたってアレはないですが、あっちはまだ『あり得ない』と分かっている分zipよりマシではありますね……」

 隣にいたお兄ちゃんは遠い目をして私に話しかけてきます。

「未だにzipパスワードやってんのか……PGP使えよって話だよなあ……」

 お兄ちゃんに言っていることは正論ではあるのですが、一つ見落としがあります。

「お兄ちゃん……一般ユーザーは公開鍵暗号の使い方って理解できないんですよ?」

「じゃあlavabitとかprotonmailとか知らなくても使えるサービス使えばいいのに……」

 お兄ちゃんの言っていることは理想論ですね、英語がダメな人もいるんですからそれは無理というモノです。

 私の管理するインフラは企業でも家庭用の器機を使っているところもざらなのでマジでお金をかけたがらないんですよねえ……

 企業で家庭用ブロードバンドルーターを使っているところがあるという闇については言及しないことにしましょう。

 普通の人は暗号化の強度なんてしったこっちゃないんです、残念ですが現実は残酷です。

「そうですね……お兄ちゃんの言ってることは正しいですよ、バイトに三十分くらいの時給分のセキュリティすらケチる会社があるんですよ?」

「闇が深いなあ……」

 そんなものです、私はもう諦めましたが、いつかはセキュリティの意識が高くなって欲しいと思うのは分かるんですが、多くの人はSSLすら知らないんですよね、ああ現実ってなんて残酷なのでしょうか。

「ま、世の中そんなモノですよ? 大丈夫、お兄ちゃんがそんな俗世間に関わる必要はありませんから、そう、永遠に!」

「それはそれでどうなんだよ……」

 お兄ちゃんはワガママですね……私がお兄ちゃんを守り養うって言ってるんだからいいじゃないですか。

 とはいえ、お兄ちゃんに世間の流行を知らせておく必要もあるんでしょうかね?

 うーん……私のお兄ちゃんが面倒ごとで悩むのは見たくないですからやめておきましょう。

「お兄ちゃんと私の通信はsignal使ってるし秘密は守られますよ? 他の誰ともやりとりする必要なんてないでしょう? それともPGPの方が好みですか?」

 私とお兄ちゃんの通信は秘匿しておく必要があります、私のモノをちゃんと管理する必要がありますからね。

「なんにしても、お兄ちゃんが世間と関わる必要なんてないんですよ? 私は全てを許します、たとえお兄ちゃんが異常性癖を持っていようが、性格が悪かろうが、働かなくても、その他もろもろを含めて、お兄ちゃんが私のお兄ちゃんであるかぎり、私はお兄ちゃんを愛します」

「重い……めっちゃ重い……というか俺をそんな風に思ってるのか?」

「例えですよ例え! 細かいですね、お兄ちゃんは偉大な私の下に安心して生活できるってことですよ!」

 まったく……お兄ちゃんは妹の愛ってものが分かりませんねえ……

 そんなところも含めて、私はお兄ちゃんを愛しているのですけどね。

 私はお兄ちゃんが好きだと言ってくれるまでこの姿勢は変えないと固く決意しました。

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