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芋砂始めました

「ああもう! 勝てない勝てない勝てない!」


 私の絶叫が部屋にこだまする。イライラが募ってしょうがありません。

 原因はこのゲームだ、FPSの『シューティングスターオンライン(SSO)』、先日買ったキーボードの試し打ちがてらPCにインストールしたんですけれど、腹の立つことにルームでマッチする人が全員私より上手いのです。

 ゲーム開始後即ヘッドショットで即死すらざらにあります。この人たちはゲームに本気になりすぎではないでしょうか?

 思うところはありますが、上手になろうとはしました。しかしマッチングする人が片っ端から私にヘッドショットを決めてくるので私の心はそろそろ折れそうです。

 ああ……お兄ちゃんに慰めてもらいましょう。私はいつも通り地下室への階段を下ります。

 いつもなら軽い足取りでお兄ちゃんに会うときには気分が上がるのですが、今日は少しダウナーです。

「お兄ちゃん……助けてください」

 驚いた顔でお兄ちゃんが出迎えます、私がお兄ちゃんに頼み事をするなんてあんまり無いですからね、逆はともかく……

「なるほど、そのFPSで勝てないと……」

「はい……キーボードとトラックボールはどちらも万単位するやつを買ったのにエイムがあわないんです……あとみんなが私を集中攻撃するんです……」

「なるほど、道具はいいものを……ん? トラックボール!? え? トラックボール使ってFPSやってんの?」


 あれ? 何かおかしいでしょうかロ○クール製の結構いい奴を使っているのですが……

 お兄ちゃんは呆れた顔で私を見て言いました。

「悪いことは言わないからゲームはマウスでやった方がいいぞ……」

「へ?」

 マウス? そういえばしばらく使ってませんね……しかしトラックボールはダメなのでしょうか?

「みんなマウスを使ってると思うぞ、トラックボールだと普通に使うには楽でもゲーム、ましてやFPSのエイムには向かないぞ」

 えー! 私ずっとトラックボールでやってましたよ! マウスとそんなに差があるんですか!?

「じゃ、じゃあ勝てないのは道具のせいと……」

「トラックボールは多少慣性があるからな、エイムには向かないぞ」

 なんと、道具のせいですと! しかし困りました……今はゲーミングマウスを買うほどお金に余裕がありません……

「あー……結構高いの買ったからお金無いのか……しょうがないな……俺の元いた部屋の机の抽斗開けてみろ、一応ゲーミング仕様のマウス入ってるから、たぶん電池が切れてるだろうけど交換すれば使えるはずだ」


 お兄ちゃんの愛用マウス……私が使っちゃっていいのでしょうか……少々もったいないような……

「一応言っとくが気にするほど高いもんでもないぞ、通販で数百円で買えるゲーミングマウスって有名になったやつだ、そんなに質がいいわけじゃないがトラックボールよりはマシだろう……あとこれ」

 お兄ちゃんは私の手に何かを渡しました、はて? コレはなんでしょう?

「マウスのレシーバーな、ちゃんとコレもPCに繋いだまんま渡してくれたからな、たぶん俺の部屋もそのままなんだろ? だったら使っていいぞ」

 おぉ……お兄ちゃん愛用のマウスですか! 素晴らしい! 最高じゃないですか!

「ありがとうございます! 私、リベンジしてきます!」

「お、おぅ……頑張れ」

 お兄ちゃんが少しひいている気がしますが些細な問題です。これであの私を執拗に付け狙った連中にヘッドショットをしてやります!

 タタタ

 私は元お兄ちゃんの部屋に駆け込み机の抽斗を開けます。二段目になんだかいかにも子供が好きそうなデザインのマウスが入っていました。なんでゲーミングデバイスってこんなデザインが多いんでしょうか?

 そんなことはさておき、私は部屋に戻りお兄ちゃんから受け取ったマウスのレシーバーを差し込み、マウスの電池を交換します。

 Windowsがブートしました、しばらく使ってなかったマウスですが身体が覚えているのか問題なく動かせます!

 私はSSOのアイコンをダブルクリックしてゲームを起動し、ソロのマッチ戦に参加をクリックします。

 ……数十分後

「あはは! エイムがあいます! 私の力を思い知ってください!」

 私はスポスポとスナイパーライフルで相手キャラたちにヘッドショットを当てていました。

 なにやら「出てこい芋砂」などと罵倒語らしいものがチャットに流れていましたが発言者の頭を即打ち抜きます。

 なんでしょうか? 気のせいか、お兄ちゃんと一緒にゲームをしている気分になります。このマウスのおかげでしょうか?

 そうして私は数日間、「芋砂台表」としてゲーム内で名を馳せたのでした。

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