派生版の方が有名になったフリゲ
「お兄ちゃんとネトゲがしたい……」
それがきっかけでした。
ガチャリ
いつものようにドアを開けてお兄ちゃんの部屋に突入します。
「というわけで作りました、遊びましょう!」
そう、私は手っ取り早くブラウザゲームを実装したのです。
ローグライクのシンプルなものですがチャット機能は完備です。
自宅サーバにPHP一式とjsファイルをアップしていますので家庭内でネットゲームができます!
「なにが、というわけで……なのかさっぱり分からんが……そんなに力作ができたのか?」
「あれ? 私自作って言いましたっけ?」
自作とは言っていないはずなのですが……
「そりゃお前が外部ネットにアクセスさせないのは分かってるからな、宅内LANで済ませようと思ったら自作かエミュ鯖くらいしかないじゃん? あ、エミュ鯖立てたのか?」
エミュレーションサーバ、なぜか流出したネトゲのサーバプログラムを改編して勝手に立てたサーバですが、さすがにそんなものに手を出すほど恐れ知らずではありません。
「いえ、バッチリ自作です、ブラウザゲームなのでこのアドレスにアクセスしてください。
お兄ちゃんはワタシの書いたサーバのURLを見たあと言いました。
「拡張子.phpまんま書いてるのって久しぶりに見たな、みんなフレームワークとかで隠してるんじゃないか?」
最近のネットで.htmlをたまに見るくらいで拡張子のないアドレスが多いのはフレームワークでそれを隠しているからです、ぐぬぬ、いいじゃないですかそのくらい。
「細かいことはいいじゃないですか? どうせ二人きりのサーバですよ?」
「ネトゲにする意味とは……?」
お兄ちゃんの重箱の隅をつつくような指摘を無視して早くアドレスにアクセスするよう促します。
お兄ちゃんは言いたいことはありそうですがPCでプライベートIPアドレスにアクセスしました。
「うわー……懐かしい……ここは2000年代かな?」
確かに! 私の作ったゲームが『多少』古くさいのは認めましょう、リッチなGUIも存在しないテキストベースのゲームです、でも! そこ突っ込まなくてもいいじゃないですか!
「ほらほら、私も入りましたよ、@マークが増えました! 赤が私でお兄ちゃんは青ですね、どうせvim使えるなら操作法も知ってるんでしょう? 始めますよ」
面倒なのでローグのオリジナルを参考に作っている、移動はvimのhjkl方式です。
「本物のローグもやったことないんだがなあ……」
と言いつつお兄ちゃんはちゃんとキャラを操作できているようです。初心者は移動が分からないのでこれは大丈夫のようですね。
「わっ! 罠じゃん!」
「お兄ちゃん! ヘイトシステム実装してないんで遠慮なく高ランクのヒール使って場を回してください!」
一般のゲームだとヘイトシステムのせいで高レベルなヒールを打つとターゲットがヒーラーに移るので基本やってはいけないのですが、めんど……いろいろあってシステムの実装を見送っています、遠慮なくバーンと打ってくれて問題ありません。
「あ、死んだ」
「ちょ! ヒーラーが落ちたら私ヤバいんですけど!?」
とまあこんな感じで古き良きネトゲを懐かしみながら休日を過ごしました。
自室に帰るとき、お兄ちゃんが聞いてきました。
「なあ……今ならリッチなエンジンがいくらでもあるのになんでフルスクラッチしたんだ?」
今はネトゲ対応のゲームエンジンもある、良い時代です……ですが……
「だってお兄ちゃんは私より先にネットをしてたじゃないですか! 私も体験してみたかったんですよ?」
「そっか……」
そう言ったお兄ちゃんが少しだけ笑っていた気がすると私は思いたいのでした。




