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プロジェクトRosetta

 私は今、記録をつけています。

 お兄ちゃんと私の愛の記録。ああ、なんて素晴らしい響きでしょう!

 これは私の永久保存版に確定です! しかし、少し困ったことに、お兄ちゃんがなかなか私に攻略されてくれません……ゆゆしき事態です。


 もちろん記録は私が書き、私が読むだけのものなのでいくらでも捏造……もとい演出できるのですが……

「やっぱり言質を取りたいですねえ……」


 私の記録は現在『お兄ちゃんが私に愛の告白をする』項目でストップしている。

 現実を捏造するか、無理矢理お兄ちゃんに言わせるかのロクでもない二択が手っ取り早い方法です。

 私の脳に『そもそもそんな感情も無いのに言うことがあるのか?』という疑問が浮かび、私の鋼のメンタルで黙らせます。


 これは所謂『私の伝記』なのです。

 別に世界に名を残す偉人ではありませんが、世の中にはアホみたいに高い金を払って自分史を出版する一般人もいるらしいので、私が自分専用の伝記を残すくらいどうって事はないでしょう。ISBNを取得するわけでもありませんしね。


「そういえば『あなたのための物語』って本もありましたね……結局あの話に救いはありませんでしたが……」


 別に救われたいと思っているわけではありません、お兄ちゃんが欲しいだけです。

 とはいえこの文章は間違いなく私だけのための文章です、妥協は許されません。


「お兄ちゃんを脅そうにも大体全部の手段は使ってるんですよねえ……拷問はちょっとね……」


 まあいいでしょう、ここで理論を百個あげるより、お兄ちゃんに直接お願いした方が早いのは明らかですしね。


 トントン

 階段を下りながら、私はお兄ちゃんに好かれている理由を考えました、結論としては『兄は妹を愛するもの』という結論に至りました。


 カチャカチャ、シュッ

 いつも通り暗証番号とカードキーでドアのロックを解錠します。

 まずはなにを置いても行動ですね!


 ズカズカと部屋へ入っていき、本を読んでいるお兄ちゃんに言います。


「お兄ちゃん! 私のこと愛してますよね! はいかイエスで答えてください!」


「選択肢が無いじゃん……」


 お兄ちゃんには私は恋愛対象ではないのでしょうか?

 それはいけません、私の目標は、家族で恋人で妹というポジを狙っています。最優先は恋人なのです!


「お兄ちゃん! 私のこと愛してるって言ってくれるだけでいいんです! 言うだけでもダメですか?」


「録音してそうだからヤダ」


「チッ」

 お兄ちゃんのくせにそこに思い至るとは……私のよき理解者だけはありますね……


「まあまあ、お兄ちゃんが私と恋人になると特典がたくさんありますよ!

 なんと行動の自由の保障と私の惜しみない愛情! さらには働く必要が無いように私が養ってあげます!」

 お兄ちゃんは逡巡してから答えました。

「俺は自分の意思をもので変える気はない。気持ちだけ受け取っとく」


 ぐぬぬ……

「でもまあ……不労所得には憧れるな……」


 これはチャンスでは!?

「そうです、私を愛してくれるだけで一生分の不労所得が手に入る! なんてリーズナブル!」


 お兄ちゃんは少し考えてから。

「男女としては愛していないけど好きだぞ」


 私の中でお兄ちゃんへの圧倒的感謝! この一言は人類の大いなる一歩ですよ!

 何せお兄ちゃん公式で、強要しての発言では無いからです。


 私は顔を赤く染め、部屋に逃げ帰ってしまいました。

 ボイスレコーダーを再生し先ほどの台詞に一日悶絶しました。

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