ワタシの理由
私は常々疑問だった、何故みんな『誰も幸せにならない』ことをしたがるのだろう?
私はいつも私だけの幸せを基準に行動している、死ぬときに悔いを残したくないですしね。
法律? 倫理? 人道? そんなものはとっくにどこかに投げ捨ててしまった。
誰かが言っていた『生涯をかけずに得られるものなどない』そう言うことです。
だから私はお兄ちゃんの人権すらも捨て去って、『私』のものにしようと思っています。
死ぬときに後悔しないため、ただそれだけのために私は全てを捨てられる。
ご立派な先生方が何と言おうとお兄ちゃんは私の、私だけの物だ。
愛しいお兄ちゃんのためなら私は神にも悪魔にもなれます、いや転生とかはさせたげられないですけどね。
今日も私はお兄ちゃんのところへ行きます。
「おにーちゃーん! 来ましたよー!」
お兄ちゃんはちょっと疲れているようだ、早く外に出してあげたいのはやまやまですが、お兄ちゃんが完全に私のものになるまでは我慢です、頑張れ私!
「なんでお前、俺にそんなにこだわるんだ? いい人ならもっとたくさん掃いて捨てるほど世の中にいるだろ」
お兄ちゃんは分かっていない、私の根本的な意思をまったく分かっていない。
「それは私がお兄ちゃんの妹だからです!」
「理由になってないような……」
「最近の若者はなんにでもすぐ理由があるはずと考えますね……世の中には理由のないことだって多いんですよ?」
「お前のほうが若いだろうが……理由がないって……普通に怖いんですけど」
お兄ちゃんは私が怖いんですか、実際のところ私はお兄ちゃんに激甘なのですが……
確かにお兄ちゃんを隔離するために多少、ほんのわずか、非人道的なこともしましたが。
「とにかく! 妹というのはお兄ちゃんのためならなんだってするんです! そういうモノなんだからしょうがないでしょう!」
「開き直ったな……」
妹が兄を好きでなにが悪いというのか?
私はお兄ちゃんが欲しい、全てが欲しい。
「俺を手に入れたって、俺は人生で役に立たない系の人間だと思うんだがなあ……」
イラッとする、お兄ちゃんが私の愛情を信じないことに少しだけ腹が立つ。
「いいですか! 人生なんてどうせ最後は死ぬんですからそれまで好き放題に生きたいんです! 私にとっての充実した人生はお兄ちゃんが隣にいること! だから私の物にしたいんです!」
私はつい早口でまくしたててしまった、いけないいけない、口論はクールな方が勝つと相場が決まっているというのに……
「そ、そうか……俺はただお前に幸せになって欲しいだけなんだが……」
お兄ちゃんも一応は私のことを考えてくれているようで嬉しくなります、でもそのカタチは私の考えるものと少しばかり違うようですね。
「お兄ちゃん、私はお兄ちゃんがいれば他になにも要らないんですよ? だからせめて、お兄ちゃんだけは欲しいんです。他の何を犠牲にしてもです」
お兄ちゃんは困ったような顔をして私を見ます、お兄ちゃんの意思は正直なところ最悪どうでもいいのですが、やはり相思相愛に越したことはないですからね。
「お兄ちゃん、私の物になりませんか?」
お兄ちゃんは少し考え込んでいます、もう私以外にお兄ちゃんに関わる人なんていないのに悩む必要があるのでしょうか?
「あと数年……いや、時間が解決してくれなかったらお前のモノになるよ」
「お兄ちゃんは私の愛を期限付きのものだと思ってるんですか?」
「というか気の迷いかなと思ってる」
お兄ちゃんの考えは分かった、ならば答えは決まっています。
「それは私の勝ちですね……フフフ……」
お兄ちゃんのあまりにも私に分のある賭けに私は全力で乗るのでした。




