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お兄ちゃんを甘やかしてみようかな?

「お兄ちゃん……ハァハァ……」


 現在妹は兄の閉じ込められている部屋の監視カメラの映像を見ながら興奮していた。


 もはや人間味を捨て去ったんじゃないかと思うくらい兄の扱いが玩具レベルだがいつものことだ。


「いつ見ても飽きませんねえ……お兄ちゃんコレクションもドンドン増えてます」


 妹の部屋の本棚にはDVDのトールケースが一杯に詰まっている。

 大半は盗撮だが多少は同意の上で撮られた映像もある……ちなみに現在の部屋のカメラはRAIDを組んだSSDに多重バックアップ体制を取っている。

 なんと磁気テープも個人で使うという狂気の沙汰だ。


「さて、お宝映像も自動録画してますし晩ご飯を届けに行きますか」


 トコトコと地下室への階段を下っていく、鉄製のドアの前に立って深呼吸をする。

「お兄ちゃんとの時間は一分一秒が貴重ですからね、お兄ちゃんの前では完璧にしていないと」


 完璧な人間が監禁をするのかという当たり前の疑問に答える人間はいない……


 ドアのキーパッドにパスワードを入力してアンロックする、セキュリティに完璧はない、お兄ちゃんを大事にするためには必要だ。


 手にはお盆に載ったご飯とすまし汁、お魚が載っている、今回は「二人分」だ。


 キィーバタン……


「お兄ちゃん! 晩ご飯を一緒に食べましょう!」


「なぁ……出してくれよ、そろそろ人とのしゃべり方忘れそうなんだが……」


 お兄ちゃんはそう言うが、私は決して油断しない。

「お兄ちゃんはちょっと疲れてるんですよ、食べ終わったらシャワー浴びてゆっくり寝てください、きっと明日は私をもっと好きになってますよ?」


 兄はコイツの正気を思い切り疑っているがSAN値チェックも出来ないので諦めている。「さてさて、一緒に食べましょうね! いやあ、お兄ちゃんとの団欒の食卓っていいですね!」


 ここに団欒はあるのだろうか……本人が満足しているなら別にいいのだろう。


 パクパク、ムシャムシャ……


「お兄ちゃん、何か話しましょうよ、天気の話とかでもいいですからさぁ!」


「まずこの部屋に天気の概念があると思うか?」


 ちなみにここは地下室、天窓は基本的に薄暗い。


「そうですね……天井にスクリーンでも貼って外部の映像を流せばあるいは……」


「俺を解放すれば済む話だと思うんだけどなあ……!」


 お兄ちゃんは食欲が無いようであまり箸が進んでいない。

 お兄ちゃんの元気が無いのはよろしいことではない……よし!


「はい、あーん」


 お兄ちゃんは困り顔だがお兄ちゃんが食べないなら食べさせればいいのだ。


「お兄ちゃん! 食べないと健康に支障が出ますよ? 私が食べさせてあげますから食べてください!」


 箸を向けるとお兄ちゃんはしぶしぶ「自分の」皿の食事に手を付けた。

 まったく照れ屋さんなんだから……その辺含めて好きなんですけどねえ……


 食事はなんとか終わったのでお兄ちゃんにサービスしてあげよう。


「ほらほら、元気出してください、膝枕してあげますから!」


「いや、遠慮しておく」


 お兄ちゃんはそう言うとお風呂に行く、ちゃんと私が着替えは持ってきているので福利厚生は完璧だ。

 こんな永久就職先として優秀な人なかなかいないと思うのだがお兄ちゃんは私の想いに応えてくれない。


「まあいいや……どうせ時間はあるんだし、じっくりとお兄ちゃんを私色に染め上げますよ……」


 私は含み笑いをしながら部屋を後にした。

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