チートをする
うーん、このチート……
決して異世界に転生したわけではない、普通にチートをしただけです。
そう、プログラミングでチート!
とはいっても不正行為ではなくプログラミング問題にタイトルから問題内容を予想してあらかじめコードを書いておいただけです。
そしてヤマがモロに当たってわずか数秒で問題をといてしまいました。
「ちょっと申し訳ないなぁ……」
真面目に問題に取り組んだ人には大変申し訳ないがこういうチーターが上位にいるんだろうなあ……
いや、私は別に不正をしていたわけではないのですけれど……
罪悪感が募るのでお兄ちゃんに負の感情を浄化してもらいましょう。
タントン……
階段を下りながら考える。
「あのスキルチェック……真面目にやった人も居るんでしょうねえ……」
運営もタイトルから処理内容が透けて見えるような文にしているのも落ち度だとは思うのだけれど、やはりズルをした感じは消えてくれない。
Twitterに一つの投稿で全文を載せられる程度のコードで何が分かるのかは謎だが解けない人も居るから問題なのでしょう。
「お兄ちゃん! ちょっとこの問題解いてもらえますか?」
お兄ちゃんも同じくらいのタイムでコードを書ければ私がそれほどチートではないことになる、詭弁? そんなこと気にしません。
お兄ちゃんに問題文のコピペを見せるとPCに向いてタンタンとキーボードを打ちはじめました。
メカニカルキーボードのカタカタ音が部屋に響くこと数十秒……
「これでいいのか?」
お兄ちゃんが書いたコードは数行で私の物とほとんど変わりませんでした。
「簡単でしたか?」
「と、いうか……問題ですらないような気もするが……言語縛りもないし……」
私の書いたテスト用シェルスクリプトを実行して結果が正しいことを確かめます。
全テスト通過『AC』と画面に表示されました。
「さすがですねお兄ちゃん、あっという間に書きましたね!」
お兄ちゃんもなんで書かされたのか分からず困惑しているようです。
私はちょっとしたチートをして上位に食い込んだことを打ち明けました。
「まあ……問題の作者が悪いな……」
「そうですか?」
私は聞き返します。
「いや、このタイトルから実装の仕方が予想できるのはどうかと思うがな……しかもリッチな言語が使えたら簡単すぎるだろ……bfやWhiteSpaceで書けっていわれたらそりゃ悩むけどさ……」
私は幾分か気分が軽くなりました、しかもお兄ちゃんの書いたコードは私の物とほとんど違いません! これは半分初めての共同作業では!?
「ああそうだ」
お兄ちゃんが何かを思い出したように言います。
「暇だから解けない問題あったら持ってきてくれ、なんか暇つぶしが欲しい」
お兄ちゃんはチートをまったく気にしないようです、いいんですかね?
「ま、まあ! 天才の私が解けない問題がもしも、もしも存在していたら持ってきますよ!」
お兄ちゃんは液晶に向いてコードを書きながら、私に背中越しに手を振りました。
 




