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トリアエズエディタツクル

 私は書いていたPythonのコードが一段落したのでPyCharmで保存をして閉じる。


 何も問題は無い、進捗は順調だ。

 この自作のテキストエディタは問題なく開発が進んでいる。

「機械はいいですねえ……私に絶対に逆らわないんですから」


 お兄ちゃんとは大違いだ。

 githubにプロトタイプをデプロイした後、これからの事を考える。


「なんとかお兄ちゃんにも使ってもらえないでしょうか……」


 そこで私にひらめきが起きる。


 お兄ちゃんのPCのvimを消しましょう!


 ソースの保存されたUSBメモリを持ってお兄ちゃんのところへ向かう。


「お兄ちゃん! ちょっとPC貸してください!」


 バタンとドアを開けると同時に言い放つとお兄ちゃんは何故か狼狽していた。


「おっと、お取り込み中でしたか? 用事があるなら私は部屋に帰りますよ?」


 お兄ちゃんはびっくりしながら私を引き留める。

「ちょっとまて、部屋に戻って何をする気だ?」


「カメラの映像がループ録画モードなので消えないうちに保存しようかと」


 お兄ちゃんが『お取り込み中』であれば観察するのもやぶさかではない。

 安物のmicroSDカードを使っているので時間が経つと古い方から消えていってしまう。


「ま……待った! いやあ、丁度可愛い妹の言うことをききたくなったなあ! いやあ、いいタイミングで来てくれたよ」


 安っぽい取り繕い方だけれど、私を可愛いと言ってくれたのでチャンスですね!


「じゃあお兄ちゃん、PC借りますね?」


「あ、ああ。構わないが何をするんだ?」

「ないしょです」


 そう言って私はPCを起動してUSBメモリを差し込むと、自動的にマウントされてファイル一覧が表示される。


 私はwhich vimをターミナルに打ち込んで/usr/bin/vimが入っているのを確認する。

 デフォルトでPythonが入っているのは知っているのでエディタ起動のシェルスクリプトをmv edit.sh をsudo cp /usr/vimと入力して上書きする。


 シェルにbashが標準で入っているのでスクリプトの戦闘は#!/usr/bin/bashと書いている、後はちょちょいっと実行権限を与えて一丁上がり!


「はい、終わったので後は好きに使って構いませんよ」


 ちなみにこのエディタ、自動で指定されたストレージに書いたテキストを保存する機能もついている、もちろん私のNASに専用ディレクトリを用意している。


 キーロガーを仕込む方法もあるが、全入力を送ると要不要の情報が大量に来てどれを読めばいいか分からなくなってしまう、その点テキストエディタならそれしか書く道具がないので問題ない。


「じゃあ、ありがとうございます。お兄ちゃん、晩ご飯はちゃんと食べてくださいね?」


「ああ、分かってる」


 そうして私は部屋に戻った。

 夕食を持っていったあとお兄ちゃんとの時間を取りたかったのですが、そうするとPCを使う時間が減りますからお兄ちゃんの自由時間は必要でしょう。


 夜中の3時頃にアラームをセットして寝る、多分お兄ちゃんが何か書くなら寝る前だと踏んでいる。

 そういうことでお兄ちゃんの書いた文章がアップされ終わったら一刻も早く読みたい、いや、読まなければならない。


 ……ピピピ


 目覚ましのスマホが鳴る、私は眠い目をこすりながらNASにアクセスする。

 ちゃんと一つのテキストファイルが出来ていた。


「グッドですね」


 私ははやる気持ちを抑えてファイルを開く。


『今日は妹にPCを触らせた、一体何をしていたのかは知らないがあまりうかつな行動は取れないだろう。:w』


おおお! これはもしや日記では! お兄ちゃんの日記! 覗きみたいです。

  ここで一つ区切りがついていてしばらく改行文字が入力されていた。


 おかしいですね? なんでこんなに改行が?

 しばらくの改行の後にその理由が書いてあった。


『見てるんだろう? それっぽいエディタだから分からないと思ったか? ちゃんとvimのコマンドも実装しとこうな。』

 そう書かれていた。


 くぅ……しまった、キーバインドをnanoで実装してたの忘れてました……nanoを起動するようにしておくべきでした。


 ちなみにEmacsは入っていません、閑話休題。


 そうして私はお兄ちゃんが書くはずだった『日記』の内容を妄想しながら夜が明ける頃再び眠れたのです。

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