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IT界隈の闇

「ふぅ……疲れますねえ……」


 私はアルバイトのコーディングを終えてつぶやく。

 世界には無茶ぶりが多すぎる、もっとみんな広い心を持つべきだ。


「さて、お兄ちゃんとこ行きますか」

 そうだ、京都行こうみたいなノリでお兄ちゃんのところへ向かう。


 私にはお兄ちゃんは素晴らしいエンタメだ。


「おにーちゃん、可愛い妹が来ましたよ!」

「ああ……」


 お兄ちゃんは気もそぞろにネットに繋がってないPCを眺めています……可愛い妹が来たというのに。


「何やってるんですか?」


 私がお兄ちゃんにきくと意外な答えが返ってきた。


「いや、ちょっとシステムのハッキングをな……」


 お兄ちゃんときたらネットに繋がってもいないのに不毛なことをしていますね……


「お兄ちゃん、そのPCは完全にネットと遮断されてますから見つけてもしょうがないですよ?」

 私の計画に不備はない、お兄ちゃんに快適かつ私だけを見てもらうために完璧な環境にしてある。

「それだよ」

「ん? なんですか?」


「いや、このPC、ネットに繋がってないだろ? セキュリティアップデートも降ってこないから脆弱性があるんじゃ無いかと思ってな……」


 お兄ちゃん……うぅ……私を愛さないばかりにそんな実の無い作業にかかりっきりだったんですか。


「で、何か見つかりましたか?」


 お兄ちゃんは両手を挙げて答える。

「さっぱり、フォーマット文字列とか、オーバーフローとかシェルインジェクションも調べたけどさっぱりだな」


 お兄ちゃんは意外とガチ勢だった、CTF(システムの攻撃をコンテストにした物)に出れば結構いい線行きそうですね……

 しかし……とりあえずえっちい目的で使えないようにLinuxを入れときましたけど、この調子だとクラックもされそうですね。


「お兄ちゃん、その情熱を少しは私に向けてくれませんかね?」

「兄妹以上のことはないぞ、つーか兄妹で満足しろよ」


 お兄ちゃんは世界の宝とも言うべき『妹』を軽視していますね、世の中の男の人は大体妹が好きなんですよ(当社調べ)


 そこは追い々い詰めていくとして、今構って欲しいんですけどね。


「じゃあお兄ちゃん、今日の無茶ぶりの愚痴を聞いてくださいよ。コンピュータ関連ですよ?」

「ああそう。なんか仕様変更でもあった?」

 なんだか私にぞんざいな気がするのですが……

「いえ、上流の流してきた仕様そのまま実装したら……大惨事に……」


「それは……お気の毒に……あんまり上流責めてやるなよ? もっと上がいるかもしれないんだから」

 私も上流工程が悪いとは言わない、もはや何次受けか分からないようなものを小銭ほしさに関わったのだから私が悪い、それは分かっているのです。


「理解はします……理解はしても納得は出来ないんですよ……」


 納得と理解はまた別の物です、『そういうもの』で片付けられないこともあるのです。


「しょうがないな」

 お兄ちゃんが突然私を抱き寄せてくれた、驚きでビクッとする。


「あ、悪い……いや、なんか大変だったんだなって……」


「い! いえ! お気持ちはとてもありがたいのですが……予想外だったので……」


 そう答えるとお兄ちゃんは私を離す、名残惜しいのだが我慢だ、我慢。


「じゃあお兄ちゃん! まだお兄ちゃんを養うための収入が要るのでもうひと頑張りしてきますね!」


 私はお兄ちゃんへのアピールも欠かさず急いで部屋に帰る。


「ふぅ……いきなりはズルいですよ……チートです、あんなの……」


 顔を赤く染めてベッドに飛び込む、ばすんと音を立て私は横になる。


 私らしくもない……いつもならガッツリ行ってたでしょうに。


 どうにもメンタルが削られて、そこに突然のデレが来たので対応できなかった、失態ですね。

「しょうがない、この案件からは手を引きましょう、チャンスを無駄にしたらお金があってもしょうがないですしね」


 私はPCでslackを開き手を引く旨を伝えた。

 どうせこの件では歯車の一つだ、私一人が抜けても困ることはない。


 そう、お兄ちゃんにとって私はたった一人の存在だが、このムカムカする案件にとっては替えのきく存在なんです。だったらどっちを取るかは考えるまでもないでしょう。


 ッターン

 力強くエンターキーを押したら、なんだか肩の荷が下りた気がしたのは気のせいではないでしょうね。

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