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雷と静電気は怖いよね!

 ガシャン!


 ひぇっ……


 近くに雷が落ちたようです、とても怖いです。

「こういうの苦手なんですけどねえ……」


 苦手な人のところに貧乏くじが来るのは世界の摂理なのだろうか。


「そうだ!」


 私は『ピッコーン!』と擬音がつきそうな思いつきをした。

 タタタっと階段を駆け下りてお兄ちゃんの部屋の前に立つ。


 まずは落ち着こう、浮ついてたらお兄ちゃんも心配してくれない。


 すーはーすーはー


 深呼吸をして気分を落ち着ける、いけないいけない、お兄ちゃんのこととなると何でもうれしさのほうが先立って笑顔になってしまう。


ポチポチポチ、PINコードを打ち込みロックを解除する。

 ガチャリ


 ドアを開けると同時にお兄ちゃんの胸に飛び込んだ。


「こわいですよー! 雷が鳴ってます、怖いので一緒に居てください!」


 ギュッとお兄ちゃんに抱きつくと温かな感触が伝わってきて気分が良くなるが、あくまで怖がっている姿勢は崩さない。


「なんか棒読みだなあ……別にいいけど……」


 私の頭に手をポンと置いてくれるお兄ちゃん、私はウへへへと顔が崩れる。


「そういや、お前のPC雷のサージで壊れたことあったもんな……あの時は困ったぞ、延々と泣くんだから……」


 お兄ちゃんが言っているのは以前バックアップをとっていないお兄ちゃんの写真が雷の停電で動作の怪しかったHDDごとお亡くなりになったときのことだろう。

 私は二度も失敗する人間ではないのでSSDから外付けSSDに、溜まってきたらテープドライブへのバックアップもとっている、あのような悲劇を二度と起こして溜まるものか。


「こわいです……またお兄ちゃんの思い出が遠くへ行くのは嫌ですよぅ……」


 少し本気で怖かったのはないしょだ、あくまで怖がっている演技に徹する。

 本気だと非定型の反応をされたときに、印象の良い対応が出来ない。その辺はちゃんとしている。


「よしよし、こうしてる分には可愛いんだがなぁ……行動が……」


 何やら不躾なことを言われているようですが前半が高評価なので後半はきかなかったことにしてあげましょう。


「お兄ちゃん、もっとこうギュッとしてください」


「えー……お前怖がってないだろ?」


 くっ……お見通しですか……

 しょうがありません、私は渋々お兄ちゃんから離れます。


「でも少し怖かったのは本当ですよ! 本当ですからね!」


「なんかトラウマでもあんのかよ? まあいいけどさ」


 私はこの場面の映像がロープ録画で削除される前にストレージに保存するため涙ながらに部屋を出て自分の部屋へ向かい、録画映像を保存します。

 これでお兄ちゃんとの思い出がまた一つできましたね。


 そう想った私だったがふと気付いた。

「はて? お兄ちゃんは私が演技をしていると気付いてましたね……じゃあなんであんなに優しかったんでしょう……?」


 その疑問に答えは出ることがなく、考えている間に夕立もすっかり上がってしまったのだった。

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