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妹、時流に乗ろうとする

「時代はテレワークですね!」


 そう、時代はリモートで何でもする時代!


「ということでお兄ちゃんの部屋にディスプレイとカメラとマイクを置いておきますね」


 お兄ちゃんは頭を抱えていた。


「なに! どういうこと? 同じ家に住んでるのにリモートでなんかするの?」


 私はお兄ちゃんにこの器機の優位性を説く。

「いいですか! 私とお兄ちゃんはいわば近くて遠い存在、物事には順序があると思い至ったのです、いきなりこうしてきたらお兄ちゃんあんまりご機嫌が良くないじゃないですか? というわけで私と毎日これでコミュニケーションを取ることで私との距離を縮めたいんです」


 お兄ちゃんは呆れた顔をする。


「そもそも、閉じ込めてるから機嫌が悪いんだが……そこを何とかしようという気は無いのか……」


 私はお兄ちゃんに現実を教えなければならない。


「いいですか? お兄ちゃんの物理的な身体はもう私のモノなんです! あとは心さえ掴めばお兄ちゃんは完全に私のモノになるんです!」


 そして私は非情な現実を話す。


「考えても見てください、お兄ちゃんはどこか行く当てがあるんですか? お父さんとお母さんは認めてくれてるんだから他に頼る人はいないでしょう?」


「俺にだって友達くらい……」


「あ、お兄ちゃんのメールアドレスはパスワード割れてるんでそのアドレスを使って関係先にはメールを送っておきましたよ?」


 お兄ちゃんはなんだか怖がって震えている。


「ちなみにメールの内容は……?」


「大体が『そうかよもう二度と連絡してくるな』という返事が来るような内容です」


 私は事もなげに言う、お兄ちゃんを手に入れるためならお兄ちゃんの交友関係は必要ない……というかない方が好都合です。

「ねぇ俺何か悪いことしたかなぁ! そこまでされるような恨みを買ったか?」


 お兄ちゃんは往生際が悪いですね、お兄ちゃんには大きな罪があるんですよ。


「お兄ちゃん、心当たりはありませんか? 胸に手を当てて私にした仕打ちを考えてみましょう?」


 お兄ちゃんが頭を巡らせているが本気で心当たりはないようだ、困った物です。


「では答え合わせですね、まずお兄ちゃんは可愛い妹からの求婚を断った、これで一つ」


「いやいやいや、血の繋がりとか考えろよ!」


「そして何より……」


 お兄ちゃんが喉をゴクリと鳴らす。


「私に愛されるような人間だからですよ! そう! 全てはお兄ちゃんのため、全てはお兄ちゃんへの愛故に! です」


 私がそう言うとお兄ちゃんは絶望フェイスをしていた、いいですねぇ……お兄ちゃんの絶望した顔……これもまたいいですね。

 私がこんな事をしていなければ絶対にこんな顔は見られなかったはずだ、私の行動でお兄ちゃんの新しい一面を見ることが出来て至極嬉しいなあ。


「愛とは一体……?」

「ためらわないことですよ」


 お兄ちゃんがすかさずツッコむ。


「何歳だよ!? そのネタ知ってるの三十じゃきかないくらい年がいってるぞ!」


「ちゃんと分かってくれるお兄ちゃんはやっぱり好きですよ?」


 そうして部屋に帰り、その夜はお兄ちゃんと一晩中おしゃべりをした。

 やはり顔が見られるのはいい……隠し撮りでもいいんですけど一方通行ですからね……やっぱり対話というのは大事です。


 何故か翌朝お兄ちゃんは疲れを浮かべて眠っていた、一体何でお兄ちゃんは愛する妹との会話で疲れてしまうのだろう?

 私はまったく疲れていないというのにね。


 そうして私はお兄ちゃんの心を掴もうとより一層頑張ろうと心に決めた。

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