表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/111

幕間:始まり


 昔の話――それほど遠くない昔、兄妹は結婚の約束をした。

 それは冗談のようなもので本気で信じたのは妹だけだった。


「ねえ……覚えてますか? 私が幼稚園にいた頃にお兄ちゃんにプロポーズしたこと」


「あぁ……あれが本気だと思う奴は十人中十人いないだろうな」


 お兄ちゃんはしょうがない人です、せっかく私が勇気を振り絞って告白したというのに……

 あの時私はお兄ちゃんのことが好きでした、それはまだ家族愛だったのかもしれません。それが男女の愛情へ変わっていったのはいつからだったのでしょうか?


 私はお兄ちゃんがどこかへいってしまうたびに半泣きになり、お兄ちゃんが私以外と結婚する夢を見ては涙を流していました。


 そんなお兄ちゃんが今では私の小さな手のひらの上にいます、だから……この機会だけは絶対に逃したくないんです。


「お兄ちゃん……私のこと、好きになりました?」


 お兄ちゃんは渋々言う。


「家族としてならちゃんと好きだよ、男女としては無い」


 お兄ちゃんの答えは変わらないようです。

 じゃあもうしばらく私の元から離れてもらうわけにはいきませんね。


「お兄ちゃんは私の気持ちが分からないんですか?」


「……それは多分気の迷いみたいなモノだと思うぞ……」


 私の永遠の誓いを気の迷いというお兄ちゃん、物事の真実を見抜くことは出来ないようですね。

 それでも構いません、私はお兄ちゃんを手に入れたのです、もう誰にも邪魔されることなくお兄ちゃんと愛を育んでいけるんです。


「お兄ちゃん……絶対私を女の子として見てもらいますからね?」


 私はお兄ちゃんが私を好きな理由は「妹」だからだと思っている。

 きっとその考えを変えるには永劫に近い時間が必要なのかもしれません。

 それでも私はお兄ちゃんを求め続けます、きっといつかお兄ちゃんが私を求めてくれると信じて。


 ちょっと今日はしんみりしちゃいましたね、こういう日はお兄ちゃんのベッドで寝るに限ります。


 私はお兄ちゃんが使っていた布団に包まって静かに眠りにつきました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ