表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/111

才能の維持コスト

「ふっふふーん……」

 私はいい気分で料理をしていました、え? 何故かって?

 お兄ちゃんと一緒に食べるからです!

 そう、いっつもお兄ちゃんの料理を作るときはこんな感じなんですよね。

 いつもは買ってきたものやUberが多いのですが、たまには手料理を振る舞わないと、私が料理できないと思われちゃいますからね。

 ちなみにお兄ちゃんの部屋はガスを引いていないですしIHも付けてません、もし火事になったときに危ないからですね。

 卵と砂糖とミルクを混ぜてフレンチトーストの準備をします。

 おっと、つい卵を潰してしまいました……幸いもう一個ありますね。

 あ! 砂糖と塩を間違えてました、もったいないですけどこのミルクは破棄ですね……

 いえ! 普段はちゃんと料理ができているんですよ? ただ今日はほんの少しだけ調子が悪いだけです! 決して! 出来合いのものの方が楽だから料理の腕が落ちたとかではないです! 私は完璧……なんの問題もありません。

 フライパンに油を入れて……なんか香ばしい油ですね?

 ん! コレごま油じゃないですか!? どこの世界にフレンチトーストにごま油使う人がいるんですか!?

「とまあ、努力を評価していただきたいなと……」

 私はお兄ちゃんにやや黒っぽいフレンチトーストを載せた皿を差し出しながら言いました、ええ、弁明ですとも!

 お兄ちゃんは無言で箸でそれを掴んで切って口へ放り込みます、さすがに少し問題があったような気がします……

「美味しいじゃん」

「へっ!?」

 お兄ちゃんが高評価をくれるとは……私はできる子なんですね!

「では私も」

「あっ……」

 お兄ちゃんが何か言いかけたようですが気にせず口に放り込みました。

「まああああああああっっっっっっっず!!」

 ソレは木炭のような味でした、いえ木炭食べたことないんですけど……

「お兄ちゃん、本気で美味しいと思ってました?」

 お兄ちゃんは何でもないことのように言います。

「妹が作ってくれた料理にケチを付ける兄なんていないだろ?」

 おお……お兄ちゃんはお兄ちゃんの鑑みたいな人ですね……

「ありがとうございます、ただ次からは正直に言うか私を止めてくださいね?」

 うっっっっっっげええええええええ……

 クッソ不味い……これを顔色一つ変えずに食べたお兄ちゃんは何者なんですか本当に……

「そうだな、ここで吐かれても困るし……」

 口の中のものをなんとか、やっとの思いで飲み下してからお兄ちゃんに聞きました。

「私ってもしかして料理下手ですか……?」

「いや、慣れればいけるんじゃないか? 継続は力なりって言うしな」

「そうですね、次です! 次こそはお兄ちゃんに美味しいと言わせる料理を作りますからね!」

「今回も美味しいと入ったじゃん?」

「本心から美味しいと思わせるって言ってるんですよ!」

 私はそこそこ残っているフレンチトーストらしきものを下げて生ゴミに捨てようと思ったらお兄ちゃんが止めました。

「せっかくだからちゃんと全部食べるよ? 置いといて」

 お兄ちゃんは正気なのでしょうか? 妹への愛とやらでもさすがにこの味はキツいものがあると思うのですが……

 私は釈然としないながらも皿を置いて部屋を後にしました。

 その後、お兄ちゃんが本当に食べたのかは不明ですが、あの料理を話題に出すのは私のトラウマになったのでやめることにしました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ