妹とプラグアンドプレイ
「ふっざけんなー!」
私は思わず手にしたスマホを壁にたたきつけることでした……
電話の用件はワタシの書いたコードの不具合が再現しましたとのことです。
いや、バグの再現はいいんですよ? それ自体には何の問題も無いですし、バグが見つかったのはいいことです。
問題はその原因でした。
「ケーブルが刺さってませんでしたじゃねーですよ!? こっちが延々バグ取りしてんのにそっちでこんなミスしてんじゃないです!」
私だってしまいにゃ切れますよ? 再現しないのに延々悩んで、コードの検証してんのにオチがコレですよ? 舐めてますね!
私がムカついているのを隠しもせずにお兄ちゃんに愚痴ります。
しかしお兄ちゃんは冷静に言いました。
「いや、電源コードが抜けてたとか普通にある世界だし、そのくらいいいんじゃ……」
「なんですか! お兄ちゃんはあのクソ顧客の肩を持つんですか?」
「肩を持つんじゃなくて、お前がもっと広い視野を持ったほうがいいって話だろう?」
むむ……お兄ちゃんなら同意して貰えると思ったんですが……
「お兄ちゃん、今はクソ案件の話をしているんです、素直に私の愚痴を聞いてくださいね?」
私は目に力を込めながら言った。
さすがにお兄ちゃんも私の死んだ目を見たらいくらかは察してくれたようです……何故人と人とはわかり合えないんでしょうね?
現在の私はたぶん濁りきった目をしているのでしょう、なんだかお兄ちゃんが可哀想なものを見るような顔を見るような顔をしています……
大丈夫、私は元気、なんの問題もありません。
そう、私はスーパーエンジニア、決してクソみたいなバグは出さない、天才です! 何も恥ずべき事はないですね。
私は自己暗示をかけてから多少正気を取り戻してお兄ちゃんと向き合います。
「失礼、あまりにも酷い案件だったのでつい口が滑りました……私は大丈夫なのでご心配なく」
「そっちの方がよっぽど心配なんだがなあ……」
あ、お兄ちゃんもちゃんと心配してくれてるんですね! ありがとう、ありがとうございます!
と、圧倒的感謝をしたところでお兄ちゃんとコーヒーを飲みます。ちなみにジャスミンティーには心をリラックスさせる効果があるらしく、デバッグ中はがぶ飲みしていました。
「お兄ちゃん? ちょっとレッドブルが余ってるんですがあげましょうか? 少しくらいエナドリを水のごとく飲む体験も貴重だと思いますよ?」
私は長期戦を覚悟して買い込んだエナドリのおすそ分けを提案しました。
「いや、やめとくわ。というかお前身体壊さないようにな……」
お兄ちゃんの心配はとってもありがたいのですけど、私は今更別の高給バイトを探すのは無理なのですよ……
「ではお兄ちゃん! 私は休日を手に入れたのでお兄ちゃんと遊びたいです!」
「って言ってもなあ……この部屋に全年齢対象のゲームってないし……」
「というわけで大人気でなかなか手に入らなかったゲーム機が二台あります」
「大人気()」
とまあ、お兄ちゃんと一緒にレトロゲーで遊んだのでした。




