ひとりのはじまり、ひとつのおわり-2
「以上がアルマティ・ガンダルフくんから受け取った報告のすべてです」
イミナから使い魔と書類を受け取り、ロイは頷いた。
「ありがとうございます。……アオイくんの様子は?」
「部屋にこもりきりのようです」
「……無理もありませんね。報告ありがとうございました」
イミナが部屋を出てから、ロイは使い魔と書類をデスクに乗せ、モノクルを外す。そして消沈を抑えきれずに顔を手で押さえた。
「ガロード……」
ガロードを向かわせたことや、シン魔法によるシン領域の浸食のことをわかっていたつもりになっていたこと。自分の指示が一人の命を奪ったことを受け止め、ロイは静かに息をつく。
「やはり私は、あなたに師と仰がれるような器ではありませんでしたよ、ガロード」
ロイはアオイから託されたガロードの破片を丁寧に手で包み込んだ。アオイは憔悴しきった表情で、それでもせめてロイにと、シン魔法で刃の塊となってしまったガロードを持ち帰ろうとしたのだと話してくれた。
子どもが目の当たりにするにはあまりにも残酷な光景だったことは想像に難くない。ロイの自責の念は斜面を転がる雪玉のように膨れ上がるばかりだった。
「――いけないな。このままではもっと彼に叱られてしまいそうだ」
ロイはガロードの欠片を丁寧にしまうと、ぴしゃりと己の頬を叩く。改めてアルマから届いた報告書と私信に目を通していると、気になる文面を見つけ、ロイは眉を顰めた。
『今回の一連の事件は裏でアビスが糸を引いていたことは疑いようのない事実ですが、今回の実精霊トリアイナの暴走に合わせてやつらが現れなかったことに疑問が残ります。やつらの目的が何であれ、他の実精霊たちの封印が綻んでいないかの調査をすべきかと上に打診するつもりです。また、実精霊トリアイナの肉体を取り込んだアオイの魔力の急激な上昇にも不安が残ります。魔力塊を手に入れたから伸びた、というよりも、元々存在したキャパシティに取り込まれ、ようやく力を取り戻したかのような、そんな不自然さが感じられたためです』
直筆の文には、幾度か書くのを迷うような跡も見られた。ロイは顎に手を添えると、しばらくして万年筆と手紙を取り出す。
「言葉にして伝えなければ、全てがすれ違ってしまいますものね」
それはかつて、手紙の送り主に対してロイが言った言葉だった。ロイはアオイに起きた出来事を、懇切丁寧に綴る。
やがて書き終えたそれをアルマから届いた使い魔とは別の使い魔を呼び出して括り付け、ロイは窓から送り出した。
「アビスが出るか蛇が出るか。……私も覚悟を決めねば」




