実戦訓練-11
「……まさか、ガンダルフ家の封印にほころびが入っただなんて……」
トリアイナからひとしきりの説明を受けたガロードは頭を抱える。トリアイナは退屈そうにあくびをすると、アオイの頭の上で腕を組んだ。
「ま、あそこの家の者たちなら問題ないでしょ。だから私としてはアオイとしばらくラブラブしていたいんだけど――」
「アルマくんを放っておけない」
「ってアオイが聞かなくてねえ」
ガロードは唸り声をあげる。ランファはアオイに目線を合わせると問いかけた。
「アタシは封印術式見てみたいって薄っすい期待をしてるけど、正直私たちの出る幕ないとは思うよ?」
アオイは、ランファから少しだけ目をそらし、小さく頷く。だが、すぐに目に強い光を宿して向き直った。
「でも、友達だから。何か出来ることをしたい」
「それで、出来ることが戦うことくらいだから、トリアイナの本体の鎮圧を手伝うって?発想が飛躍しすぎだろ……」
ガロードの言葉に、アオイは渋い顔をする。ガロードは腕を組んで唸ったあと、観念したように両手を挙げた。
「ま、最低限死にはしないような知識は詰めたと思うから……。避難誘導の手伝いくらいなら出来るはずだ」
「避難誘導って……」
アオイのあからさまな不満に、ガロードは厳しい目を向ける。アオイが口をつぐむと、ガロードは指で自分の足を叩き、口を開いた。
「何度も何度も言ったはずだ。戦場は地獄だ。いるだけで消耗するってな」
「……でもそのために訓練を――」
「あんな子供騙しと一緒にするんじゃねえ」
それまでも幾度か粗暴な言葉を使ってはいたが、ガロードは初めて明確に声を荒げる。アオイがびくりと肩を震わせたのを見て、ガロードは今度は哀しげにアオイを睨んだ。
「この程度でビビるお前が前に出てみろ。周りの足を引っ張るだけ引っ張って全滅だ。そうなった時、お前が責任をどうやってとるんだ?取れないのに、取らなきゃならない責任を、どうやって取るつもりなんだ?」
「そ、そんなの……屁理屈だ!みんなだってそうじゃないか!」
アオイは歯を食いしばって言い返す。ガロードがため息をついたのを見て、今度はランファが口を開いた。
「アオイ。“出来ること”って、やりたいことよりも遥かに小さいものだよ。今のアタシたちには圧倒的に時間も経験も足りてない。空気を知るには良いかもしれないけど、飛び込むのはただの自殺と同じよ」
アオイも、それ以上の反論はしない。それでも悔しげなアオイのことを、ランファもガロードも、少しだけ穏やかな目で見る。彼は理解できていないわけではないのだと、しっかりと確認したからだ。
「今度錬金術教えてあげる。アタシの言ったこと、たぶんわかってくれると思うから」
「……結論は出たのかな?」
トリアイナが退屈そうに尋ねる。ガロードが代表して頷くと、トリアイナは満足げにアオイに抱きついた。
「まあ安心してよ。ボクは何があってもこの子は守るからさ」
「……もしかしてアタシハブられてる?」
「そうだよ?」
一切悪びれずにトリアイナに返され、若干ランファの顔から血の気が引く。助けを求めるようにガロードに顔を向けるが、ガロードはただ肩をすくめた。
「こういうやつだ。昔からな」
「どうせ後方支援だろう?死にはしないよ。きっとね」




