閑話休題 魔女のお茶会
「……………」
下唇に皺を寄せ、鼻をすすりながら紅茶のカップを傾けるシオン。ミルティは、呆れたような、気だるげな表情でシオンの話を聞いていた。
「で、結局アオイくんが連れてかれちゃった、と。バカなの?」
「うぅぅううう……」
泣きじゃくるシオンに、白けた視線を向けるミルティ。シオンの家で、他の人目がないもあってか、街に出た時からは想像もつかないほど棘のある声で続ける。
「いつもちゃんと確認しなさいって言ってるじゃない。もう力でねじ伏せれば何とかなる時代じゃないのよ」
「アオイー……」
この鳴き声も何度聞いたか、とぼやくと、ミルティは自分のカップに口をつけた。それから、何とはなしに部屋を見回す。
「それにしても、いつの間に整頓したの?普段はこれが機能的だとかほざいて片付けしないのに」
「全部アオイがやってくれた……」
「あーそう。そりゃ可愛がるわけだ」
何度も頷くシオンを見ながら、ミルティはカップから立ち昇る湯気の香りを楽しみ、口に運んだ。
(……ちょっと妬けちゃうわね)
そんな醜い嫉妬はおくびにも出さず、ミルティは笑いかける。
「これを機に整理整頓くらい自分で覚えなさいな。いい訓練期間になるでしょ」
「アオイー……」
雛鳥のような情けない声で弟子の名を呼ぶシオンに、ミルティはデコピンを食らわせた。
(変わるものね。人も、世界も)
窓からうららかな日差しが差し込む。風にそよぐ草原の光に目を細めながら、ミルティはカップを傾けた。
「アオイー……」