アラビックヤ○トを買い占めろ!
令和元年5月30日。
液体のりについて衝撃的な発表があった。
白血病などの治療に用いられる造血幹細胞を培養するのに、これまではバカ高い培養液を使用していたが、液体のりの成分PVAが優れた代用品になることが判明。
このニュースはTwitterなどでまたたく間に広がり、液体のりの代表格アラビックヤ○トが注目を集めた。会社名が似ているところの株が上昇したり、(アラビックヤ○トの会社は上場株がないらしい)大騒ぎだ。
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「立野くん!立野くんはいないか?」
博士が呼んでいる。立野くんは白衣についた猫の毛をとるので忙しかったが、手を止めて、博士の元へ出向いた。
「なんですか?」
「アラビックヤ○トだ!アラビックヤ○トを買えるだけ買い占めるんだ!」
「なーんでまたそんな?」
「研究に必要なのじゃ!大急ぎで行きたまえ」
「ふえええい」
不得要領なままで立野くんは買い出しに行かされた。
途中でスマホのニュースを見て、現状を把握した。
「えらいこっちゃ。博士は、細胞の培養の研究をおっ始めるつもりだぞ!?」
とうとう真骨頂の研究に着手する時がきたのか?
立野くんははやる思いを胸に液体のりを買い占めた。
「ただいま帰りました」
「おおっ!待っておったぞ」
博士は大量の液体のりを受け取ると、研究室にこもった。
「マルを連れてきてくれ給え」
飼い猫の名前を言いつけられた。
「博士。マルは実験用マウスじゃありませんよ!」
「何を言っとる!当たり前じゃろ」
「?」
「マルの抜け毛を抑える研究じゃ」
「はあああああ?!」
にゃーん。マルが立野くんのズボンに身体をこすりつけてきた。抜け毛でズボンがえらいことになった。
「よーしよし。のりで固めてやるぞ!」
「博士!やめてください!」
このときの博士のせいでマルは立野くんにしか懐かなくなった。