ゾンビ執事と魔王城
第2話:ゾンビ執事と魔王城
「……ろ。……きろ。……起きろ!」
「うわっ!」
聞き覚えの無い声に、内人は起こされた。
「もう、こんなことじゃ先が思いやられます。もっとしっかりしてくださいよ。」
「おっ……お前、誰だ?!」
内人の目に映るその人物の姿は、けっして人とはいえない怪奇なものだった。どことなく人との共通点はあるものの、顔の色は蒼白く、耳はとがっていた。
「ばっっ、化け物!!」
とっさに内人は叫んだ。が、その人物に
「あなた、初対面の人に”化け物”は無いでしょう。失礼ですよ。それに、ワタクシには“グランセル”という名前があります。せめて名前でお呼びください。」
となだめられてしまった。内人がなんと反論すればよいか思案していると、奥のほうから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「はっはっは。うちの執事とは仲良くなれたか?」
「あっ!あなたは!」
そう、その男こそ内人をここに連れてきた張本人であり、この城の主、「魔王」だったのである。
「よーし、じゃあさっそく仕事を始めてもらうぞ。最初の仕事は……。」
と話し始めようとする魔王を、内人が遮った。
「いやちょっと待ってください。ここ、どこですか?あと、あんた誰?」
「ここは俺の城で、俺はここの主”魔王”だが。何か問題でも?」
当たり前のように話す魔王と、納得がいかない内人。二人の質疑応答は長い間続いた。
「この世界何?」
「君の住んでいる世界とは違う世界。つまり異世界だな。」
「じゃあ何で異世界に住んでるお前がこっちの世界に来た?」
「優秀な人材を探すため」
「っそういう問題じゃない!何でお前はこっちに来れる?」
「魔力があるから」
「くっ。じゃああいつ…確かグランセルとかいったな。は何者だ?」
「ゾンビ。の精鋭。」
「じゃあ…」
「しゃらーっぷ!」
この二人の攻防を制したのはグランセルだった。
「まず、あなた、えーっとパイポさん、とか言いましたっけ?魔王殿下に対して物言いが横柄すぎます!もうすこしお喋りを慎んでください。それと殿下。こんなアホと言い争いをしているくらいなら、」
「な・い・とだし、アホは余計だッ!」
「兎に角、仕事を終わらせてください!このぶんではまた私の休暇が奪われてしまい……」
「グランセル、また心の声が漏れてる。」
「ハッ!申し訳ございません。もう、とにかくッ!二人ともッ!自覚が足らなさすぎます!早くご自分のしなくてはならない事を終わらせてくださいッ!これ以上同じことを続けたら、この温厚なグランセルもさすがに怒りますッ!」
ここでさすがの二人もグランセルの怒りを感じ取り、素直に謝った。
「ではパイポさん、仕事を説明しますよ。」
「ないと、だッ!」




