86 とまと、賽の目に切られる
本日2回目の更新です。
「緊急かぁ、うーんと、急ぎたいときは?」
あれ?やっぱり単に朝食が待ちきれないだけか?
「まぁ、確かにユーリさんが畑から降りるのはそれなりに時間がかかりますからね」
ブライス君の言葉にローファスさんがぶんぶんと思い切り頭を縦に振る。
登るときは、体力がなくて時間がかかるのは確かだけど……。
「降りるときは野菜を落っことしたりつぶしたりしないように気を付けないといけないので、仕方がないんですっ!」
体力がないだけが理由じゃないんだもの。
両手両足を使って落下しないように下りないといけないのに、野菜にまで気を遣うんだからっ!
ローファスさんがいつも私がよじ登っている岩場をちらりと見た。
「おーい、サーガ、ちと頼みがある」
ローファスさんが手招きしてサーガさんを呼びつけた。
「なんですか?」
「ちょっと何人か手を貸してくんねぇか?あの岩どけて削って階段を作ってもらいたいんだが」
「は?まさか、軍を階段を作るために使いたいって言ってます?無理に決まってるじゃないですか」
え?
階段を作る?
あればうれしいけど、でも、サーガさんの言うことが正しい。
「働かざる者食うべからず、ユーリの朝食はおいしいぞぉ」
え?
何言ってるんでしょう、この人。
「さぁ、ユーリさんローファスさんも働く気なさそうですし、行きましょう」
ブライス君も呆れた様子で二人に背を向け私の手にしていた野菜を持ってくれた。
小屋に戻ると、カーツ君とキリカちゃんがすでに台所にいた。
「ユーリお姉ちゃん、今日は何を作るの?キリカもお手伝いするよ!」
カーツ君はすでにご飯を炊いていた。
えっと、パンにするつもりなんだけどとは言えない。
ご飯でお弁当を作りますか。
「そういえば、ブライス君たちは今日もまだいるの?いつ帰るの?」
冒険者としてスタンピードで現れたモンスターが街に入らないようにするために来ているはずだ。
軍が到着するまでの3日なんとか街へとモンスターの侵入を防いだのだから、もう依頼は完了のはず。
「まぁ、たぶん今日の昼までにはギルドから強制依頼達成と連絡があるでしょうね。そうしたら、通常に戻るはずなので、僕もローファスさんも途中になっている依頼に戻りますよ。……ここは昼前か、昼過ぎかに出ていくことになると思います」
そっか。やっぱりそうなんだね。
「軍の人たちは?サーガさんはどうするんだろう?」
昨日夕飯を一緒にしただけで、もしこのあたりに残るとしても一緒にご飯を食べるわけじゃないとは思うけど……。
「ユーリさんは、サーガさんが気に入ったのですか?」
「え?」
突然のブライス君の質問に驚く。
「えーっと、もしご飯を食べるなら多めに作らないといけないから、気になっただけなんだけど……」
ブライス君がほっとした顔をして頷いた。
「では、サーガさんには軍に戻ってそちらで食事をするように言いますね。こちらの都合も考えてくださいと言えば、理解してくれると思います」
都合に合わせて行動してくれる?
そうか……。
夕飯を作って待っていても、連絡せずに食べて帰ってきた主人の姿を思い出す。
食べて帰るときは連絡してほしいと言ったこともある。
「いちいち連絡しろだと?余ったのならお前が次の日の昼食にでもすれば済むだろう、何を言ってるんだばかばかしい。むしろ、昼食を作らずにすんで楽になるだろう?」
主人は、私の都合を考えてくれることはなかった。
鍋の準備を整えて主人を待つ私のことを……一度くらいは考えてくれてもよかったのに。
「ねぇ、キリカは何をすればいい?」
キリカちゃんが私の服のすそを引っ張った。
あ、そうだった。朝食の準備をしなくちゃね。
「じゃぁ、トマトを洗ってくれる?そのあと賽の目に切ってほしいんだ」
「さいのめ?」
賽の目じゃわからないか。サイコロも、わかんないかな。
「洗ったら教えてくれる?一緒に切ろうね」
それから、生の葉っぱを見る。
どうしたらいいのかな。すりつぶしてペーストにして使うか、みじん切りにして使うか……悩みどころだ。
すりつぶすのはめんどくさいよなぁ。
「僕は何をしましょうか?」
あ、手があった。
ごらんいただきありがとうございます!
待ちきれず、つい本日2回目更新しちゃいました!
今書いてるところ(もう少し先ですが)楽しくて!早く出したい!
長居髭、背丈の低くてがっしりした鍛冶屋、あああっ!それだけ条件揃ってたら、あれでしょ!あれ!
はい。ネタバレってほどじゃないことに気が付いたのでもう一度書いてみた。
それから、数えてみたら、異世界生活、まだ10日目くらいなんですねぇ……。
旦那サイドの方が日数たつのが早いぞ……。
では!




