閑話*日本では
例の奴なので、苦手な人は飛ばしてね
*勘違いする人がいらっしゃるかもしれませんので念のため*
作中の描写は私の意見ではありません。あくまでもキャラクターの見解です。
私は「ボロは着てても心は錦」派です。
華菜と暮らせば、俺はこんな生活ともおさらばできるというのに。
ワイシャツは、洗っても皺にならないという安っぽい化繊のものに変えた。
きっちりとアイロンのかかっているワイシャツに早く戻したい。幸いに部下たちは見る目がないのか変化には気が付いていないようだが、上流の人間は一目見てアイロン不要の安物だと見破るだろう。
靴もそうだ。
手入れが行き届かない状態で本革の靴を履くよりは、ぱっと見綺麗に保てる合皮の靴。見る物が見れば光沢からなにから全然違うのは一目瞭然。
くそっ。
あいつのせいで俺は、こんなみじめな恰好で外をうろつかないとダメなんだ。俺は一流の人間だ!一流の人間には一流の品を持つべきなんだ!それなのに!
食事もそうだ。
おいしいと感じる外食を毎日続けるのは金銭的にも時間的にも厳しい。
結局、まだましな味だと感じるサラダ中心の夕食だ。朝はパンと牛乳だけ。
どうにも体調がすぐれない。疲れも取れない。
栄養が偏っているせいかもしれない。
くそ。あいつのせいで!
あいつが離婚届に判も押さずに出て行ったせいで!
華菜と暮らすこともできずに、俺はこんな地獄のような生活を強いられているんだ。
くそっ。
どこに逃げた。
そんなに俺と別れたくないのか!
ゴミもベランダに出すこともできずに部屋に入れた。
リビングの三分の一がゴミ袋で埋まっている。
臭いもひどい。変な汁が滴っている。
くそっ。
分別?知るか!そんなもんっ!
くそっ。そうだ、よくゴミ屋敷を掃除する業者とかがいるとテレビでやっているではないか。そういう業者に頼んで……。
いや、誰が?
俺が?
俺が、立ち会うのか?
できるものか!
俺がゴミ屋敷にしたんじゃない!この家の専業主婦がぐーたらで、家をほっぽり出して出て行ったからだ。
なんで、あいつの不始末のせいで、俺が恥をかかなくちゃならないんだ!冗談じゃない!
くそ!
くそ!
苛立ちまぎれに、近場のゴミを蹴り上げる。
ガシャンと、何かがぶつかる音。
パリンと、何かが割れる音。
そして、突然襲われる痛み。
「ぐあっ!」
割れた何かで足を切った。
足の甲から鮮血が滴り落ちる。
「血、血だ……」
どうするんだった?
血を止めるにはどうすればいい?
何かで抑えるのか?
何か?
タオルでいいのか?
タオル……。
だめだ、洗ってあるタオルはない。汚いタオルで押さえたらばい菌が入るんじゃないのか?
ないのか?新しいタオル……。ああそうだ、新しいワイシャツならある。まとめて10ほど買ったんだ。
寝室に移動する。
あー、ラグに血が滴り落ちる。床にも転々と血の跡が。
くそっ、あの血は誰が綺麗にするんだよ!
ラグはゴミだな。
ワイシャツ、畜生、安物だといっても数千円はするんだぞっ、新品のワイシャツで傷を抑える。
「うっ」
真っ白なワイシャツがどんどんと赤く染まっていく。
やばい、これ、血が止まらなかったらどうしたらいいんだ?
救急車?
いや、これくらいで救急車を呼ぶなと言われそうだ。
だが、血が止まらなかったら死ぬんだぞ?
ほら、もうすでにワイシャツの三分の一が赤い。
そ、そうだ、止血の方法、スマホで調べれば、スマホは……リビングだ、また戻るのか。
振り返ったときに、寝室の棚にぶつかり、ドスンと何かが落ちてきた。
くそっ、あいつだな!
分厚い本だ。いくらしたんだ。無駄遣いをするなとあれほど言っておいたのに。
忌々しい。
落ちた本に視線を落とす。
「家庭の医学?」
付箋がたくさんはさんである。
突発。
アデノ。
ヒトメタ。
マイコ。
は?まったく意味が分からない。
異物を飲み込んだ時。
発熱+嘔吐。
高熱3日以上。
あー、そういうことか。あいつはPCもスマホもないからこれで子供たちがいざというときにどうすればいいのか調べてたのか。
付箋には止血は貼ってない。
くそっ!どこまでも役にたたねぇ女だな。
いつもありがとうございます!
なんでもかんでも人のせいとか世の中のせいとか環境のせいとか政治のせいとかにする人いますよねー。
自分はなーんも悪くないって信じて疑わない人。
さて、この小説の”せいで”と少しでも思うことがございましたら、読むのをやめることををお勧めいたします。
この小説の”おかげで”と思うようなことがございましたら、褒めて(*'ω'*)




