80 全部クラーケンのせい!
「耐毒効果に補正値が付いてますね」
耐毒効果?
そういえば、地球でもわさびの効果についていろいろ研究されてたなぁ。
胃がんになりにくいとか。そういえば、解毒作用もあるとか言ってたし、だから当たりだと毒消し草なのかな?偶然?ハズレがわさび。当たりは何味なんだろうか?
「おおー、ほんとうだ。またまた倍になってんなぁ」
「は?耐毒効果?何のことです?」
サーガさんが視線を動かした。何もないテーブルの上に視線がさまよう。
そこに本人しか見えないステータス画面が浮かんでいるのだろう。視線は忙しく上下左右に動く。
「どういうことですか?耐毒作用だけじゃない。俊敏性と防御力と攻撃力とHPも上がっている……」
酢と醤油と酒とみりんつかったしなぁ。
使ってないのはポーションとMPポーションだね。
「兄さん、どういうことですか?」
「さぁねぇ、クラーケンを食べたからかなぁ?」
と、ローファスさんがすっとぼけた。
「それか、ダンジョン内で手に入れたドロップ品のハズレ毒消し草の効果かねぇ?」
え?
わさびって、ダンジョンのドロップ品なの?
その辺に生えてるわけじゃないの?いや、わさびは栽培場所が限られるからその辺ってわけにはいかないけど、そうじゃなくて、えっと、モンスター倒さないと手に入らないってこと?
ガタンとサーガさんが立ち上がる。
「これは、大発見じゃないですか!すぐに報告しなければ」
「秘密な。秘密。ここで食べた料理の話も、料理を食べたらどうなったかも、全部秘密」
ローファスさんがずいぶん適当にサーガさんに対応する。
「秘密って、兄さん、大発見なのに、秘密にしろと?いったいどうして秘密なんですかっ!」
ブライス君がはぁーとこめかみを抑えた。
「サーガさん、もしクラーケンを食べることでいろいろな効果があると知ったらどうしますか?ダンジョンの中で倒しても身は得られない。とすると、クラーケンをダンジョンの外におびき出して倒すようになるでしょう。そうすると……」
サーガさんが小さく舌を鳴らした。
「そうか。いつも倒せるとは限らない。うち漏らしたクラーケンが街を襲う危険も出てくる。クラーケンの身がその効果から高く売れるとなれば、金に目がくらんでろくに実力もない人間が無茶をすることも考えられる……」
ブライス君が頷いた。
「厄介なことに、クラーケンは他のモンスターを取り込んでどんどん巨大化、そして強くなっていきます。今回のクラーケンよりも大きくて強いものが街を襲う危険も十分に考えられます」
「分かりました。クラーケンが食べられることも、食べたら補正効果が付くことも秘密にします。ハズレ毒消し草の方は公表しても構いませんか?」
ローファスさんは黙ったまま。いや、口はさっきからひっきりなしに開いている。寿司を食べ、たこわさを食べ、酒を飲み、寿司を食べ、実に忙しそうだ。
「どうでしょう。ローファスさんがドロップ品といっていましたが、すべてのハズレ毒消し草に耐毒効果があるか分かりません。もし効果があるならもう知れ渡っているでしょう。今まで効果が発見されていなかったということは、ドロップ品がレアものの、ハズレ毒消し草だった可能性もあるかもしれません」
ブライス君が代わりにサーガさんに答えている。
「なるほど。むやみにハズレ毒消し草に対する期待値をあげてがっかりさせるよりもまず、秘密裏に調査研究しtからの方がよさそうですね」
はい。納得してくれたようです。
「まぁまぁ、そんな話なんて後でもできるだろう。ほら、飲め。食え。せっかくの料理が冷めちゃうだろ」
まぁ、寿司は初めから冷たいですけどね。たこわさも。
あ、冷めちゃうと言えば!
大根の煮つけ出すの忘れてた!
タコ大根。
はい。結局、大根とネギと燻製肉と一緒にタコも入れました。だって、たくさんあって……。めちゃくちゃたくさんあって……。
器にタコ大根を盛り付けて出す。
それから、大根のつま。
刺身といえば大根のつま。寿司だけど、刺身ないけど、せっかくなので作ってみた。
つまを食べない派の人もいるけど、私は大根サラダみたいで好きなのです。わさび醤油つけて食べるとおいしいです。
……うん。
桂剥きとかうまくできないし、細く切れないので、つまというよりは大根サラダの大根のように太くなっちゃったけどね。まさに大根サラダ。
「これは、大根ですか。柔らかくて味がよくしみている。この味付けはいったい何ですか?塩でもなさそうだ」
醤油とポーションと酒でございます。とは言えませんですね。はい。
大根の煮つけはタコと一緒に煮てあるので、えーっと、答えに困ったら……。
「クラーケンからよい出汁が出たみたいですね」
全部、クラーケンの仕業!
便利だ!
いつもありがとうございます。
にょーん




