78 隠す気ありますか
「ステータスを確認しながら食事、ですか?」
サーガさんが首をかしげる。
「ステータスオープン」
キリカちゃんやカーツ君もステータスをいつものように開く。
「ダンジョンルールですよ。口にしたものに毒が含まれていてはいけませんからね?」
ブライス君が適当にごまかして席に着いた。
「ああ、なるほど。確かに今回は未知ともいえるクラーケンを口にするわけですから、毒、麻痺、急激なHP減少などステータスで異常が見つかる可能性もありますね。ステータスオープン」
「あっ!」
思わず声が出る。
「え?どうしました?」
「い、いえ……その、お酒を注ぐ器がないなぁと……木のコップでいいですか?」
料理を食べたら補正値のこととかステータス見てたらバレバレだよね。秘密は守るって言ったって、知られないに越したことはない。
先に酒に酔って記憶が飛ぶとかないかなぁなんて……。ははは。
「ああ、もしかして銀のグラスが無いのを気にしてますか?毒の有無を調べるために銀食器を貴族は使うという地域もあるそうですね。もしかしてユーリちゃんの故郷ではそういう習慣があったのかな?ここでは、毒を口に含んだら、すぐに解毒薬を飲みますから大丈夫ですよ」
なんか、つい声を上げてしまったことを、勝手に解釈してくれたよ。
そうじゃなくて、ステータス……のこと……。
ブライス君の顔を見ると小さく首を横に振った。
そっか。もう知られても仕方がないよということなんだね。あとはローファスさんに何とかしてもらおうと。
「では、今日のメニューを紹介しますね」
まずは、寿司を乗せた皿をテーブルの中央に置く。
「これがキリカちゃんの作った寿司です。白髪ねぎが載せてあります。こちらはカーツくんの作った山鳥の燻製肉の寿司です。それから、こちらがタコ……クラーケンの寿司です」
サーガさんが目を丸くする。
「君たちも作ったのかい?」
キリカちゃんとカーツ君に向けての言葉だ。
「うん。だってね、働かざる者食うべからずなの。お手伝いしないと食べられないのよ」
「まぁ、どっちか言うと、手伝うから料理作ってってお願いしてる感じなんだけどな」
キリカちゃんとカーツくんの言葉に、サーガさんが申し訳なさそうな顔をする。
「私は、その、手伝ってないんだが、いただいてもいいのかい?」
お。
ここでダメと言えば、ステータス補正のこととかばれないんじゃ。
バンバン。
ローファスさんがサーガさんの背中を叩いた。
「はははっ。気にするな。山鳥を取ってきたのは俺。それを燻製にしたのはブライス。それから、飴を運んだのがお前な。立派に手伝いになってるさ!」
うぐぐ。
ローファスさん、もう全く隠す気ゼロですね。分かりました。では、早速いただくことにしましょうか?
「じゃぁ、食おう。いただきます!」
ローファスさんがクラーケン寿司に躊躇なく手を伸ばす。
そうか。箸がないから、スプーンやフォークで寿司は食べにくいから手になるんだ。
「ローファスさん、こうして、醤油を少しつけて食べるんです。それから、」
説明の途中で醤油をつけてローファスさんはがぶりとタコの寿司を口に入れた」
お口に合うかしら?
「むむむっ」
皆の注目がローファスさんに集まる。
「今度のご飯は、おにぎりと違って甘酸っぱい味がある。うめぇぞ。ほら、皆も食え、食え!それから、クラーケン……初めて食べたがこの肉とも違う弾力のあるカニュカニュした噛みごたえはくせになりそうだな」
「兄さん、おいしいのは分かりましたが、毒とか、その体に害は……?」
ローファスさんがサーガさんの質問に首を横に大きく振ってこたえた。
「いつも通りだな。ユーリ、こっちのはなんだ?」
いつも通りということは、ステータス補正値の話なんだろうなぁ。
「これはたこわさです。生のタコ……クラーケンにピリリとわさびの辛みがたまらない酒のつまみです」
説明の途中でローファスさんはスプーンでたこわさをすくって口に入れた。
「うっ」
鼻をつまむ。
うん。だろうね。
たこわさはさぁ、タコをひとかけら口に入れるだけで十分口に味が……わさびが広がるから、スプーンに山盛りどっさり口に入れたら来るよね。鼻に。
「大丈夫ですか、兄さんっ!」
って、そんなことを知らないサーガさんが大慌てだ。
なんだかんだ言って、お兄さん思いなんだねぇ。って、心が温かくなってる場合じゃなくて。
いつもご覧いただきありがとうございます。
カクヨム&アルファポリスに掲載していた短期集中連載「義弟が~」完結(一応)しました。
感想ほぼなしのしょんぼり作品ですが、異世界召喚失敗ざまぁを書くための4万文字でした。
楽しく書けましたありがとうございました。
てなわけで、完結記念として、ハズレ連続投稿。にゃーん。




