閑話*日本では
通称浮気女登場!
閑話が苦手な方は飛ばしてください。旦那サイドです。
「一緒に住む?」
華菜は嬉しそうな顔を見せる。
「一日も早く一緒に住もう」
言葉を続けると、華菜が首を傾げた。
「一緒に住むって言うことは、もう離婚したのね?」
声のトーンがいつもよりも高い。
「あ、いや、それは、まだなんだ」
「え?」
あっという間に華菜の声が低くなる。
「離婚はまだなの?どうして?離婚したから、一緒に住もうって言ってくれたんじゃ……」
目元に涙をにじませる華菜。
「いや、その……」
「離婚前に同棲だなんて、離婚するときの心証が悪くなるといっていたのは課長ですよね?」
ああ。そうだ。
同じ会社なのだ。離婚の原因が俺の浮気だなんてバレるわけにはいかない。
離婚してから二人の仲が知られるのは構わない。
男は、離婚してからすぐに別の女性と結婚できる権利が法律でも認められているんだからな。
だが、離婚前に別の女性の家に転がり込んだなんてバレたら……それはだめだろう。
「いや、もう離婚したも同然だから大丈夫だ」
「何が大丈夫なんですか?まだ離婚届けを出していないなら、離婚していませんよね?私と結婚できませんよね?」
華菜がおなかをさすった。
「この子が生まれる前に、籍が入れられませんよね?この子の父親の欄はどうしたらいいんですか?」
華菜が泣き出した。
「別れた前の旦那でさえ、あの、ろくでなしの旦那でさえ……責任を取って結婚してくれたというのに……」
一瞬で頭に血が上った。
華菜の別れた旦那のことは知っている。
一人目の子供ができたので結婚。暴力を振るう最低な男だったらしい。華菜がDVから逃れようと離婚を旦那に言い渡したら無理やり二人目の子供を作ったらしい。
別れるまでにずいぶん大変だった。そうだ。DVの夫と別れ、子供を女で一つで育てるためにどうしても保育園に入れたいと申請したのに、戸籍上は父親がいるから落ちたと……。そんな中二人目の妊娠がわかり、どうしたらいいのかわからず相談に乗ったのが始まりだった。
女に暴力を振るうような糞のほうが、俺よりましだというのか?
「するさ、離婚する。すぐにでも離婚して結婚したい。だが……離婚届にあいつが署名しないんだ」
華菜が顔を上げてこちらを見た。
「離婚したくないと……言っているんですか?まさか……私には子供もできたのに?」
意外だという顔をしている。
そりゃそうだろう。
華菜も知っている。あいつがどれだけ子供たちのことを大切に思って、子供たちの幸せを望んでいたのか。
「いや。そうじゃない。慰謝料がもらえないなら仕事を探して自立できたら判を押すと言っている」
華菜が俺の手を握ってきた。
「慰謝料ならあげればいいじゃないですか」
「なぜ家で10年も楽をさせてやったのに、これ以上金を渡さないといけないんだ?」
俺の不満に、華菜が眉根を寄せ、少しむっとした表情を見せる。
何が不満だというのだ。
「慰謝料を払えばすぐに離婚してくれるというなら、慰謝料くらい渡してください。そもそも、世間的にはこちらに非があるんですから!今後のことも考えて、少し多めに渡すくらいでちょうどいいと思います」
華菜の言葉に驚く。
「いや、華菜との生活のために、あいつに金を渡したくないんだが」
華菜が首を横に振った。
「私のためというのであれば、子供たちの面倒を見てくださった保育料だと思って渡してください。恨まれたまま生活したくありません。この子のためにも」
華菜が再びお腹をさする。
「私、お金よりも、結婚したいんです。今度こそ、幸せな結婚が……」
「華菜……」
かわいそうな華菜。
DVのろくでもない男に振り回されたかわいそうな華菜。
「ああ、俺が必ず幸せにしてやる。華菜の元旦那のような糞と、俺は違うからな」
離婚か。
あいつは姿を消してから、家に一度も戻った気配もない。
いったい本当にどこへ行ったというのだ。
……そして、いつ帰ってくるんだ?
とりあえず、置手紙を残して家を空けるようにするか。
離婚届と、慰謝料を支払う旨をかいた紙を置いて。慰謝料さえもらえれば、あいつは自立したらというバカなことも言わずにすぐにサインするだろう。
住む場所がと言い出したら、アパートを借りるときの保証人にくらいはなってやる。
それで十分だろう。
ご覧いただきありがとうございます。
ユーリのことはあいつとか言っているのに、浮気女のことは華菜と呼んでいる旦那です。
カクヨムとアルファポリスに連載中の「義弟が~」もあと数話を残すのみとなりました。やっと異世界風味が出てきて面白くなってきたところでもうすぐ終わりです。はははのは。いや、いいの。逆転生、逆召喚、書きたいことは書いた。
日本に異世界の記憶(異世界ではチート)をもって転生したり、異世界の人間を召喚したりと……はい。楽しかった。けど、なぜかそこにたどり着くまでが長かった。あっれぇ?
https://www.alphapolis.co.jp/novel/531373064/672179327
アルファポリス版はこちら
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885766449
カクヨム版はこちら




