75 役立つ子供と役立たずの大人
「ローファスさん、お酒飲みますか?今から作るもの、口に合えばですがお酒のつまみにいいですよ?」
と、声をかける。
「サーガ、酒持ってるか?」
「……、分かりましたよ。少し譲りますよ。その代り、私もご一緒させてもらいますから」
ふんふふふふーん。
私って、幸せ者だぁー。
だって、だって、ハズレ毒消し草……これ、どう見ても、どう匂いを嗅いでも、ついでに一口かじってみても……。
「うひゃー、鼻につぅーーーーんときたぁ!」
風味が強くて辛みもしっかりある。
わさび。
わ、さ、び!
そりゃ、間違えてかじったらひどい目にあうね。
だからって、ハズレじゃないよ。わさびなんて大当たりだよ!
日本人のソウルフード!……って、日本人ってどんだけソウルフードたくさんあるんだろう。
でもわさびって、環境が整わないと育たないし、原産国が日本で、ダンジョンの上の畑にもなかったから……。
この世界では手に入らないかもなぁと思ってたから……うれしい!。
ああ、涙が。
おっと、これは辛くて出てきた涙ですね。調子に乗りすぎてすりおろしたわさび口に入れすぎました。
すりおろすための調理器具はありました。っていうか、これ、たぶん違うものに使うんだろうなぁっていう形状だけどすりおろすこともできたのでよしとしましょう。
「ユーリ、大丈夫か?やっぱりこれハズレだったろ?」
ツーンときて目に涙浮かべてたらローファスさんが心配そうな顔して見ています。
「あ、兄さん、何、ユーリちゃんを泣かせてるんですか!」
酒の瓶を手に小屋に入ってきたサーガさんが慌てて近寄ってきた。
もう、二人とも似てるところ全然ないようで、子供にやさしいところはそっくりですね。
……大丈夫か、平気か、無事かって……。
「大丈夫なんで、ご飯ができたら呼びますから……サーガさんはお仕事に戻ってください。ローファスさんはサーガさんに迷惑をかけたのだから、サーガさんのお手伝いしてくださいね」
ちょっと邪魔です。
つい、目つきがきつくなってしまいました。
「は、はい」
ローファスさんの背筋が伸びる。
「ふふふっ、ユーリちゃん本当にすごいね。兄さんが尻に敷かれてる」
サーガさんが肩を揺らしながら小屋を出て行った。
「ユーリ姉ちゃん、野菜取ってきたよ~」
入れ替わりに、カーツ君とキリカちゃんが畑から戻ってきた。
「ありがとう」
二人の方が料理に関しては圧倒的に役に立ちます。
「じゃぁ、カーツ君、ご飯炊いてもらえるかな?キリカちゃんは野菜を洗ってね」
「はーい。キリカ洗ってくるよ!」
頼んだ野菜は大根とネギ。
イカ大根のイカの代わりにタコを使ってタコ大根を作ろうかなぁと思ってたけど、ちょっと変更!
だって、大根と言えば、でしょ!あ、でもクラーケンがどんな味か分からないから、大根は大根で、煮ておこう。ネギと大根と干し肉と一緒に煮よう。料理名が謎になるけど……。ふろふき大根のネギと干し肉添え的な?
いくら便利な魔法石を使ったかまどと言えど、沸騰したら火を弱めるとか何分経ったら弱火にするとかそんなことまではしてくれないので、やっぱり様子を見ながら火加減が必要だ。カーツ君のご飯炊きはもう慣れたもので、吹きこぼれ具合音の変化などでうまく火加減を調整し、美味しいおこげ付きのご飯を炊いてくれる。
キリカちゃんの包丁さばきというか、ナイフ使いもかなり手慣れたもので……小さな子に包丁はと心配していたのが何だったのかと言う感じ。まぁ、まだ細かい作業はできないけれど、大根を大きく切るくらいはどってことない。
皮むきは私がするけどね。
いつもご覧いただき感謝でございます。
えー、そろそろ、皆様の一部に……「旦那サイド禁断症状」が出てきている方もいるのではないでしょうか。ずいぶん書いてない。
いや、うん、時間がなくて書く時間が……っ!ってなわけで、また本編のみ。
さて、皆様の予想通り、ワサビでしたー。もう、お酒にあうワサビ料理といえば、お分かりですね!
……酒癖、大丈夫~ローファスさん……。ただでさえ色々やらかしてるのに……。




