73 一妻多夫?!
とりあえず、一夫多妻もありな世の中ってのは分かった……。
そっか。
……えーっと、もしかして、まさか、一妻多夫もオッケーとか言わないよね?
もしそうだったら……。
私、実は結婚しているので、ごめんなさい!みたいなお断りの言葉が通用しないってことになる。
うわー、厄介だよ。
もう、私、二度と結婚するつもりはないのに……。
や、やっぱり、しっかり自立できるまでは、子供に見えるうちは、子供のふりを続けよう。
そうしよう……。
「貴族はめんどくさい人間が多いですからね。軍だけでなく官吏も騎士も、上官が庶民ではいうことを聞かない人間が多い。だから、優秀な人間を養子にして公爵家の者ということで指揮をとるんですよ」
へー。
大変だなぁ。
って、あれ?
「えっと、サーガさんは公爵家の……え?あれ?」
「まぁそうですね。妾の子ですが。公爵家の九男です」
ぐるりとローファスさんの顔を振り返って見る。
公爵家……。ってことは、ローファスさんも?
「俺?俺はただのおっさん冒険者だよ?」
サーガさんがはぁーっとため息をついた。
「仕方がありませんね。S級になってしまえば、引退するまでギルドも手放すようなことはないでしょうし……。まったく……。貴族であろうと王族であろうと、ギルドへは不可侵ってルールがあるからって……はぁー」
えーっと、うーんと、それはつまり……。
ローファスさんは公爵家の人間だけど家を飛び出して冒険者になって、自分で戻ると言わないかぎりは貴族とか関係なく冒険者?
……さっぱり分からないけれど……。
ローファスさんに貴族っぽさはない。
どこをどう切り取っても、私がイメージする貴族じゃない。
養子なのかな?
腕っぷしを見込まれて、将来軍に入れるつもりで養子にしたけれど、冒険者になりたいからと家を飛び出したとか?
うん、それなら納得。
だって、いくらなんでも、食べ物にがっつきすぎ。
あれ?貴族の食事なら高級だっていう香辛料だとか砂糖だとかも使えるんじゃない?
おいしいもの食べられたんじゃないの?
なのに家を出た?冒険者になりたいから?
「そんなことはどうでもいいだろう、飴をくれよ、飴!」
「だから、あげませんし、そもそも兄さんは甘いものそんなに好きじゃなかったでしょう?」
なるほど。甘いものには興味はなかったのね。
地球では香辛料や砂糖が高級で一部の特権階級しか使えなかった頃、富を見せびらかすためにやたらと香辛料や砂糖を使っていたと聞いたことがある。
甘いだけのお菓子や、香辛料の味がきつすぎる料理……味を楽しむためじゃなくて、富を象徴する料理……か。
それが貴族の間での常識なのだとしたら、まぁ、うん。おいしくはないよね……。
ローファスさんが私の両肩にポンと手を置いた。
「ユーリが砂糖が欲しいっていうんだ!」
ちょっ、自分のわがままの責任を私に擦り付けないでっ!
私は欲しいなんて言ってないよぅ!砂糖がないって言っただけで!
あ、いや違うか。砂糖がないからタコ料理が作れないと言ったんだっけ?
ってことはさ、やっぱり欲しいと思ってるのはタコ料理が食べたいローファスさんじゃないですかっ!
サーガさんが腰を落として目線を私の高さに合わせた。
じーっと顔を見られる。
「兄さん……この子の気を引きたくて砂糖を欲しがっていたんですか?まさか、なかなか結婚しないと思ったら、子供が好きだったなんて……」
は?
いろいろと、誤解があるようです。
まず、私は子供じゃない。
いや、それは誤解してくれても構わないけど。
っていうか、むしろ成人済だとばれないように気を付けないとだけど。
一番の誤解はでもちゃんと訂正しないと!
「私、砂糖が欲しいなんて言ってません。砂糖がないからタコ……クラーケン料理が作れないと言っただけです!」
「料理?クラーケン……で?」
サーガさんの目が点になった。
「あれ、食べられるの?っていうか、食べるの?」
そして、サーガさんの顔が青ざめる。
その隙をついて、ローファスさんがサーガさんの革袋から飴玉を一つ取り出し、代わりに金貨を何枚か入れた。
おはようございます。
GWももうすぐ終わりですね。GW頑張ってちょっと多めに更新しましたー。
……ぶっちゃけ、サーガさんのシャベル口調がブライス君とかぶっているし、
なんで、私、こんなキャラ出しちゃったんだろう……とめちゃくちゃ疑問です。
弟にも甘えるローファスさん……。面倒見もいいけど、家族や心許せる人にはとことん甘える。
オンとオフの切り替えが激しい人間です。
結婚したら、家ではゴロゴロにゃーん決定ですね……
年下女性より、絶対年上(精神的に)が合うってやつ?




