70 夜の来訪者
すいません、前の話の番号間違ってました。これが70です。
「えー、なんでぇ!っていうか、私、何であると思いこんじゃったんだっけ?パンがあったからかな?あれは自動販売機から出てきたから、誰かが作ってるわけじゃないんだよね……。っていうか、誰も作れる人いなかったんだから、小麦粉を置いておく意味ないじゃないっ!」
あああ!
っていうか、確か前にもないなぁって思ったんじゃなかった?なんで、なんで私ってば!
あると思い込んでいたから、ローファスさんに渡した買い物リストに小麦粉って書いてないよっ!
うわー、失敗。っていうか、まぁ、別にご飯があるしパンもあるから小麦粉が無くてもそんなに困ることはないんだけど、ないんだけど……ないんだけど、今日はどうしよう……。
餃子……作れません。
とぼとぼと食糧庫からキッチンに戻る。
「あ、ユーリ姉ちゃんこんな感じでいいのか?」
カーツ君がニコニコしています。
「キリカもできたよー」
キリカちゃんも楽しそうです。
今更、餃子できませんなんて言えない。
ひき肉……うん。そうだ。
「ごめんね、ちょっと材料が足りなくて、餃子じゃなくて餃子とハンバーグの中間みたいなもの作ろうか」
と、申し訳なさそうに言うと、キリカちゃんもカーツ君もニコニコ笑って答えてくれた。
「中間ってことは、両方楽しめるってことか!」
「うわー、お得だね!」
いや、うん。そっか。そういう考え方もありか!
パンをおろし金で下してパン粉にする。ニラとキャベツとひき肉と醤油と料理酒とパン粉を混ぜ混ぜ。
3人で混ぜ混ぜ。
餃子の具より少し大きめ。ハンバーグよりは小さめに形作って、オーブンで焼きます。
あとは朝食の残り物で作ったレタス角煮サラダと、ご飯です。
ちょっと組み合わせがいまいち。
「焼けたね。この酢醤油をつけて食べるんだよ。でも酸っぱいのが苦手だったら、そのまま食べてもいいからね?では。いただきます」
「ステータスオープン」
あ、そうでした。いただきますの挨拶代わりに、ステータスチェックですね。記録を取らなくちゃね。
もぐもぐ。
それぞれ自分で形にした餃子ハンバーグを食べます。補正値は私が10。カーツ君1、キリカちゃん2と、変化なし。確認した後は、ゆっくりいただきまーす。
「おいしいね。角煮と同じ猪で作ったの信じられないね。キリカ、角煮も好きだけど、これも好き」
「うめぇ。野菜なんて食べたいなんて思ったことなかったけど、これ、ニラとキャベツがなきゃおいしくないんだよな?野菜ってすげーなぁ」
うん。よかった。
すっかり食べ終わり、片付けもみんなでする。それから寝る支度を済ませてそれぞれの部屋に戻った。
ベッドに入って明日のことを考える。
冷蔵庫が無いから大量に作って何日か食べ続けることもできない。
今のところストックされてるのは干し肉、燻製肉、角煮干し肉、グミジャムだけだ。
さっき使った猪肉で生肉は最後。明日は何を作ろうかなぁ。
ローファスさんが来るの、一週間後って言ってたよね。塩の他にもいろいろ頼んだけれど、どれだけの物が手に入るのかなぁ。小麦粉は今度忘れずに頼まなくちゃ。強力粉とか薄力粉とか細かい注文できるのかな?
鑑定魔法だっけ?使えば大丈夫なのかな?
そういえば、MPポーションはコーラだったけど、ハズレMPポーションって何なのかな?
カーツ君は知ってるかな?
ローファスさんとブライス君、今頃どこで何してるのかなぁ……。
「ユーリさん、起きていますか?」
へ?
ドアの外からブライス君の声が?
空耳?
ドンドン。
ドアが激しく叩かれた。
「ユーリ、緊急事態だ!悪い、入るぞ」
ローファスさんの声もする。
ええ?ど、どういうこと?
「ローファスさん、いくら小屋の所有者だからって、勝手に女性の部屋に入るのはっ!」
「時間がないのはお前も分かっているだろうっ!」
時間がない?ローファスさんとブライス君の声は必死だ。
急いでベッドから降りて靴を履いてドアを開ける。
「ああ、起きてたか」
「どうしたんですか?二人は街へ行ったんじゃ……忘れも……」
忘れ物ですかと声をかけようとして言葉を飲み込む。
そんな雰囲気じゃない。
ピリピリとして、まるで今から戦争に行くみたいな顔をしている。
「スタンピードだ」
いつもご覧いただきありがとうございます。
何気なく書いた短編(3万文字程度)をアップし始めました。
現実世界に魔法を持ち込む系ですが……が、
「義弟が異世界賢者の転生者だと言い出した」
アルファポリス
https://www.alphapolis.co.jp/novel/531373064/672179327
カクヨム
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885766449
現在5話までアップしてあります。
主人公が高2から大学3年までの話です。義弟は中二から高校卒業(大学入学前日で話は終わる)
続き!と言っていただけると、書きたいなぁ程度には、その先がぼんやりしていますが、とりあえず、あのラストのシーンが書きたかったっていう、ただそれだけの話です。




