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【書籍化】ハズレポーションが醤油だったので料理することにしました【web版】  作者: 富士とまと


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閑話*日本では

旦那サイド。

不要な人は読み飛ばし推奨。

「あら、お隣の」

「おはようございます」

 ゴミ袋を持って外へ出ると、隣の奥さんにあった。

 めんどくせぇ。噂好き、世間話好きのおばさんだ。

 挨拶だけ返して、忙しそうにさっさと立ち去ろうと背を向けると、話しかけてきた。

 ちっ。

「最近、奥さん見ないけれど、逃げられた?」

 は?

 何だと?

 俺が、あいつに、逃げられただと?

 なんで、そうなるんだ?

 冗談じゃない!

 離婚を言い出したのは俺の方だ。なぜ、俺が、妻に逃げられるようなクズ男に見られないといけないんだよっ!

 いくら何でもそんな不名誉な、ありもしない噂をばらまかれてはたまらない。

 立ち去ろうとした足を止めて振り返る。

「ふふふ」

 隣のおばさんはにんまりと笑っている。

「冗談よ、あれでしょう?あれ。みんなで噂してるのよ」

 あれ?

 あれって何だ?

 みんなで噂だと?妻に逃げられたと噂してるわけじゃないよな?

「ゴミ捨て一つ手伝わなかったじゃない?奥さん帰ってきてからも、ちゃんと手伝わないとダメよ?」

 あれって何だ?

 ゴミ捨てをあいつが帰ってきてからも手伝えだと?

 何を言っているんだ。あいつが返っていたら、ゴミ捨てなんてするわけねぇだろう。

 主婦の仕事を、何故俺がしなくちゃならない。

 不満げな顔が浮かんでしまったのか、それとも単に自分の言いたいことだけを言い続けているだけなのか、隣のおばさんが言葉を続ける。

「若いけど、しっかりしてかわいらしくて、よくできた奥さんだものねぇ。逃げられたくないでしょう」

 だから、何故、俺が妻に逃げられる前提の話をしているんだっ!

「ああ、若い……わけじゃなかったわね。そうそう、もう三十路になるんですよって言ってたもの。つい見た目でもっと若いような気がしちゃうけれど……」

 おばさんが笑う。

 バンバンと、背中を叩かれる。

 なんだ、突然。

 勝手に俺に触るな。

「よかったわね。あれでしょ?ずっと、子供が欲しい、子供が欲しいって言ってたもの」

 は?

 どういうことだ?

 確かに、子供はできた。

 だが、俺は子供が欲しいなんて一言も言っていないし、だいたいなんで知っているんだ?

「奥さん、里帰りしてるんでしょう?」

 は?

 子供ができたのが、あいつだと思われているのか?

 あいつは……、周りの人間にも子供が欲しいなどと言っていたのか?

「よかったねぇ、本当に良かったねぇ。みんな楽しみにしてるんだよ」

 みんなが楽しみ?

 噂仲間でか?

「子供が生まれたら、とにかく奥さんをいたわってあげるんだよ。ゴミ出しだけじゃなくて、家事も育児も手伝ってあげなさいよ」

 子供が生まれたからって、なんで手伝わないといけないんだ。

 専業主婦なら、家事も育児もするのが当たり前だろう?

 俺の役目は外で働いて金を稼いでくることだ。

 家は、くつろぐ場所。家事をする場所じゃない。

「じゃないと、本当に奥さんに逃げられちゃうからね」

 だから、何故俺が逃げられる立場で話をするんだ!

 違うだろう!

 子供が生まれたからって、家事に手を抜いたり、俺のことを後回しにするようなことがあったら、俺の方があいつに離婚を言い渡すってのが普通だろ?

「そうそう、これ。みんなの気持ち」

 エプロンのポケットから、おばさんがお守りを取り出して俺の手に握らせる。

 色とりどりのお守りが5つ。

 形は色々。

 別々の神社のお守り。

 どれも「安産」と書かれている。

 みんなの気持ち?

 いったい、どれだけの人間があいつの身を思っているというんだ。

「ありがとう……ございます」

 誤解を解く気にはなれなかった。

 もし、里帰りしているのではないと知られたら、噂好きの人間たちに何を言われるか分からない。

 俺が、奥さんに逃げられるクズだと面白おかしく話すかもしれない。

 お守りをポケットにねじ込む。

 どうしろっていうんだ。こんなものもらって。

 ああ、そうだ。彼女にあげるか。

 そうしよう。

 お礼を言って、再び背を向けて歩き出す。

「ああ、そうそう、今までやってなかったから大変なのかもしれないけれど、これを機会にちゃんと覚えるといいわね」

 は?

「分からないことがあれば、教えてあげるから、遠慮なく聞いていいのよ?」

 何をだ!

 お前のような噂しか能のないばばぁに、この俺が、何の教えを乞うというんだ?

 ふざけるなよ。

 上から目線とかむかつく。

「それでね、そろそろベランダに出してあるゴミを処分していただきたいんだけど……。うちまでちょっと、においとか虫とかが……奥さんがいるときはベランダもきれいに使ってくれて助かっていたんだけどね……」

 それか!

 結局クレームが付けたくて、こんな朝から張り込んでいたってことか?

 くそっ!

 くそっ!

 俺がゴミ捨てできない無能だと、噂してるんじゃないだろうな!

「すいません、ちょっと忙しくて手が回ってなくて、次の休みには必ず……」

 くそっ!

 あいつのせいで!

 それにしても……。

 ポケットの中のお守りのふくらみを感じて口に苦い味が広がる。

 あいつ、どうやら味方がいるみたいだな。

 やはり、彼女を早々にマンションに呼ぶのは難しそうだ。

 


いつもご覧いただきありがとうございます。

書籍のキャララフ見て、のけぞったとまとです。

……か、かっこいい。ローファスさんが脳内ローファスさんと結びつかない。

キリカちゃんはきっと皆さまの脳内キリカちゃんを裏切りはしない可愛さです!

旦那の設定も提出しましたが、ないものにされました。そうよねぇ、見たくないよねぇwww

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