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【書籍化】ハズレポーションが醤油だったので料理することにしました【web版】  作者: 富士とまと


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67 契約

「そっか、ユーリ姉ちゃんの料理食べにくるのか」

「本当ですか?私が、ここでちゃんとできるか心配しているわけじゃなくて?」

 ローファスさんがぽんっと私の両肩を叩く。

「むしろ、ユーリがいて安心してるぞ。カーツもキリカもブライスも、今までよりも楽しそうだ。一人前の冒険者になるために必死にレベル上げを日々してたときの張りつめた感じが抜けて、いい感じだ。ユーリが来てからの変化だろう?」

 ローファスさんの言葉にブライス君が力強く頷く。

「ええ。ユーリさんの料理は確かにおいしいですが、もしユーリさんが料理を作れなくても、それでも僕もカーツもキリカも、前よりずっと幸せな気持ちになれていると思いますよ」

 キリカちゃんが私の右腕にしがみついた。

「うん。キリカね、ユーリお姉ちゃん大好きっ!優しくてね、いい匂いがするのっ!」

 へ?いい匂い……?

 むしろ、えっと、お風呂に入れてないし、レンコン取るのに池に突っ込んだりしてるし、大量に肉を料理したりしてるし、いろいろすごい匂いになってると思うんだけど……。

 思わず左腕を持ち上げて匂いを嗅ぐ……う、分からない。

「キリカが言うなら間違いないな。悪い人間は臭いんだろ?」

「うん。そうだよ」

 ええええっ。く、臭くならないように風呂に、風呂に入りたいですっ!

 そ、そうだ、猪の皮をはぐのに火の魔法石と水の魔法石でお湯が作れた!

 火の魔法石や水の魔法石はポーションで買えるんだよね?あと必要なのは……。

「【契約 風呂桶がほしいです 幕の内弁当】」

「【契約成立】」

 とっさに言ってみたら、すぐにローファスさんが答えた。

「で、風呂桶ってなんだ?」

 は?

「えっと、何か分からないのに契約成立とか言っても大丈夫なんですか?」

「もちろんだ。だって、弁当が貰えるんだろう?幕の内弁当ってなんだ?弁当は他にも種類があるのか?楽しみだなぁ」

 えーっと、風呂桶って、手桶の方じゃなくて浴槽の方なんだけどな、いいのかな?

 弁当1つじゃとてもわりに合わないと思うんだけど……。

 浴槽の説明をすると、ローファスさんが「ああ、大きな酒樽みたいなものか?だったらすぐに用意できるぞ」と言ってくれたので、わざわざ浴槽を作るわけじゃないなら大丈夫かと胸をなでおろす。

「ずるいー。キリカも幕の内弁当食べたいよー」

「キリカちゃんとカーツくんは、一緒に作る側だよ?もちろん、作った人は食べる権利があるからね?」

 ぎゅっと、両手を広げて泣きそうになっていたキリカちゃんとついでにカーツ君を抱きしめた。

 あー、子供のいい匂い。ちょっと汗臭いけど。

 うん、風呂ができたらみんなで入ろう。汗を流そう。

 あ、ブライス君が寂しそうな顔をしている。

「【契約 風呂桶に付与魔法で42度のお湯を満たすようにして 幕の内弁当】」

「【契約成立】」

 ブライス君が早口で答える。

「契約なんてしなくても、いつだってユーリさんのために魔法を使うのに……」

「ありがとう、ブライスくん。私もいつだってブライス君にお弁当作ってあげたいけれど……ダンジョンルールではそういうわけにはいかないんだよね?」

 子供たちをめっちゃ甘やかしたいけど、甘やかしてはいけないって……。

「そうでした」

 ブライス君がふっと綺麗な笑顔を見せる。

「どうも、僕はユーリさん相手だと冷静さを欠きすぎるようです」

 あああ、もう!ブライス君、見た目は子供なんだよ!私、子供を甘やかしたくてうずうずしてるんだからっ!

 そんな風に反省してますって顔されたら、いい子ね!って頭撫でてぎゅってしたくなっちゃうから……。

「ユーリ、お前本当にいい子だなぁ。ブライスにも幕の内弁当食べさせてあげたかったからわざわざ契約魔法を頼んだんだろう?」

 ぐりぐりぐりっと、ローファスさんに頭を撫でられる。

 あうっ、ち、畜生!分かってしまった!私が子供を甘やかしたいのと同じだ!

 ローファスさんも、私のように、子供がかわいくて仕方がないタイプだ!

 子供の成長に泣くタイプだっ!

 でも、待って、私、こんな高い高いされるほど子供じゃないから!やーめーてー!

 ローファスさん、もう、さっさとどっかへ行っちゃって!

 顔から血がでるっ!

 火じゃなくて血だよ。吐血みたいな感じ。


 ……二人の姿が見えなくなるまで、3人で見送った。

「さぁ、がんばってポーション収穫しよう!」

 カーツ君が一番初めに動き出した。

「うん。キリカがんばるよ。レベルもがんばってあげる!」

 次に声を上げたのがキリカちゃん。

「うん。がんばりましょう!次にローファスさんが来る時までにいっぱいいっぱいポーションとってびっくりさせようね!」


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