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65 忘れ物はありませんか?

「そうだ、ローファスさん、風魔法石って、空気を抜くこともできないですか?」

「空気?なんだ?」

 えっと、空気が何か?えーっと、この見えないけど、あるもので……。

「なんていうのか、こう、ふーっと」

 口からふーっと息を吐き出す。

「口の中の空気……風の元?を出すような?」

「できるんじゃないか?な、ブライス?」

「ええ」

 そうか、そうなんだ。

 そういえば、水の温度の単位、63度っていうのも、この世界では言葉はなかったけれど意味は魔法石には通用した。

「なるべく密閉できる容器と風の魔法石くださいっ!」

 ローファスさんに言ってみる。

「ああ、いいぞ。ちょっと待ってろ」

 ローファスさんが立ち上がり私の頭を撫でて小屋を出ていき、数分で戻ってきた。

「どれだけ必要だ?」

 大小さまざまな蓋つきの壺みたいなのをもっている。

「一つ、これでいいです。あの、実験なんで……」

 成功の保証などない。

 壺をしっかり洗い、角煮を3つほど入れる。

「中の空気を外に出して真空状態を保って」

 と、風魔法にお願いして壺に入れてから蓋をする。

「さっきも言っていたが空気ってなんだ?真空状態って?」

「成功したら説明します」

 と、逃げる。

 そう、真空パックとか、真空保存ができないかなってちょっと思ったの。

 だけど、風魔法が風その物じゃなくて、空気を動かすという力があるかどうかも分からない。空気を動かす力であるなら、真空状態という命令もこなせるはずだ。

 ……たぶん。

 大きく空気を動かすわけじゃないから、風の魔法石が長持ちしてくれるといいけど……。干し肉を作るために小屋の中に風を送るのは半日ほどで石の力がなくなるっていってたけど……。

 って、電池と違うのかな?消費量が多いと早く使えなくなるっていう感じじゃないのかな?

 うーん、わかんないことだらけだ。とりあえず、耳を澄ませると、かすかな音が壺から聞こえているからこの音を目安にしよう。

 成功したら、冷蔵庫は無理でも、真空パックができるんだもん。へっへっへー。レトルト食品万歳だね!

 と、なんやかんや席を立ったり座ったり落ち着きのない朝食が終わりました。

 本当は、後にしてください、ちゃんと座って食べましょうと、言うべきだったのかもしれないけれど。あとにしてくださいと言えないでしょ。

 だって、もうすぐ二人は小屋を出発するんだから。あとなんてないもの。


 そう、ご飯が終わったら、あっという間だった。

 荷車が小屋の前に出ている。

 ローファスさんは慣れた様子で荷物をまとめた。

 ブライス君も背負い袋一つ持って小屋の外に出ている。

「じゃぁ、キリカ、カーツ、ユーリお姉ちゃんにダンジョンルールをしっかり教えてあげるんだよ」

「任せとけ」

「うん。キリカね、ダンジョンルールをお姉ちゃんに教えてあげて、料理を教えてもらうの。がんばるんだ」

 ブライスくんがキリカちゃんとカーツくんの頭を順に撫でた。

 ずっと一緒に過ごしてきたんだもん。分かれは辛いよね。

「ユーリさん……二人をお願いします」

 もちろんと、頷く。

 この世界では非常識でレベルもみんなよりも低いけど、年の功だけはあるはずなので……。頼りになるかならないかはまた別の話だけど……。ううう。

「忘れ物はないですか?」

 ハンカチはもった?はなかみは?

 と、思わず日本では定番の言葉を口に出しそうになって言葉を飲み込む。

 だって、人を送り出すのには慣れてないの。何を言っていいのか分からなくて……。

「あ、忘れてた!買い物リスト、作ってくれたかユーリ?」

 え?

「あ!はい!」

 忘れ物ないかと尋ねて、忘れてたのは私の方とか!

 は、恥ずかしすぎる。

 でも、よかった。思い出してくれて。


いつもありがとうございます。


更新したと思ったらできてなかった。危ない危ない。

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