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62 パンの歴史

「パンは嫌いですか?」

 だったら仕方がないというか、この世界でパンが嫌いだったら生き辛いだろうなぁ……。かわいそうに……。

「いや、嫌いではないが、ユーリの作ったお弁当を食べられると思っていただけに、その……。いや、角煮の一夜干しがあるだけでも十分なんだが、えっとなぁ……」

 あれ?

「パンのお弁当って見たことないですか?」

 我ながら馬鹿な質問をしてしまった。携帯食はあってもお弁当を知らなかった人たちに、パンのお弁当を見たことがあるかと聞くほど愚かな話はない。見たことないに決まている。

 キリカちゃんが首を傾げた。

「パンのお弁当ってあるの?キリカ食べてみたい!」

「俺も、俺も!今度はパンが顔になるのか?」

 キリカちゃんとカーツ君の言葉にローファスさんが今度は首を傾げた。

「顔ってなんだ?」

「えっとね、ユーリお姉ちゃんがね、昨日作ってくれたお弁当はキリカのお顔だったのよ」

「そうそう、で、俺のは俺の顔だったんだぜ!」

 二人の説明に、ローファスさんが再び首をかしげる。

 まぁ、その説明では分からないよね……。

「はい、ユーリさん。パンを取ってきました。お願いします」

「ああ、ありがとう、ブライスくん」

 ブライス君が持ってきたパンは3つ。1つがソフトボールくらいの大きさがあるけれど、こんなに食べられるのかな?

 パンをまずは6枚に切る。両端の面積の少ないところはサンドイッチにしにくいのでもう一つの方に使うためによけて置く。

 パンは軽く焼いてサクサクにした方がおいしそうなので、オーブンに並べて入れて1分半ほど。

 きつね色がほんわりとついたところで取り出す。

「え?なんでパンを焼いてるんだ?焼きおにぎりも、そのままでもう食べれるのにまた焼いてたし、ユーリの故郷の料理って変なことするな?」

 ローファスさんがびっくりした顔をしてる。

 確かにすでに焼いて出来上がったパンをもう一度焼くって、日本じゃトーストとか当たり前だったから気にもしなかったけど。アンパンやメロンパンはあんまりやる人はいないか。そのまま食べるね、確かに。

 でも、メロンパンもトースターで焼くと、外がカリカリ中はふんわりほかほかで、とてもおいしく食べられるんだよね。

 ああ、メロンパン食べたいなぁ。

「ああー、何するんですかっ!それは僕のですよ?」

 ローファスさんが焼きあがったパンを一つ取って口に入れた。

 サクッっと、パンに歯を立てたおいしそうな音が響いた。

「!」

 ローファスさんの目が輝く。

「ローファスさん、だから、僕のパンだと!」

 ローファスさんがあっという間に1枚食べ終え、もう一つ手を伸ばした。

 それをブライス君が止めにかかる。

「ブライス、お前も食ってみろ、すごいぞ、なんで、切って焼いただけなのに、こんなに味が変わるんだ?」

 ローファスさんにパンを口に突っ込まれ、ブライス君が仕方なさそうに咀嚼。

「ユーリさん、素晴らしいです。パンはこう、ちぎって食べる物、温めたいときはスープにでも浸すものだと思っていましたが……切って、焼く、それだけでまるで別の食べ物のようです」

 ブライスくんの目も輝いた。

 え?なんか、さすがに、たったこれだけでこんなに褒められるのっていたたまれないんだけど……。

 そっか。この世界じゃぁ、丸いパンをちぎって食べるのが普通で、食パン的な切って完成させるパンっていうのはないんだ。確かに、丸いパンはそのまま焼けばいいけど、食パンだと型がいるもんね。

 そういえば、パンの歴史は五千年以上あるけど、食パンの歴史は2~300年くらいしかないって聞いたことがあるかも。クロワッサンが100年くらいで、なんとロールパンは歴史が浅くて50年くらい前にやっと作られたとか。

 誰から聞いたんだったかなぁ?スーパーのパン売り場に貼ってあったんだっけなぁ?とにかく、食パンの形の薄く切ったパンっていうのが無いと言うのは分かった。

 でも、切込み入れて具を挟んだりしないのかな?サンドイッチの名前の由来になった話が残っているくらいだからパンにおかずを挟んで食べるのも、一般的になったのはずいぶん歴史が浅い?

 んー。まぁいいや。こっちの世界の普通の食べ方を知らない方が、日本の普通で過ごせる。

 だってもし、こっちではこうして食べるのが普通を知っちゃうと……郷に入っては郷に従えってなっちゃうもん。

「物を知らないと思われたくない」とか、「人と違うことをして仲間外れになりたくない」とかいろいろ考えちゃって。

 女がでしゃばるな!偉そうに意見を言うな!みっともない!

 っていう主人の言葉を思い出す。

 偉そうに言ったつもりはなかったんだけれど……私の言い方が悪かったのかな。どういう言い方をすればみっともなくないのか、私には難しくて……。主人に何かを言うことが怖くなったんだ。

「って、ユーリさんの料理がおいしいのと、ローファスさんが僕のパンを食べるのは別の話ですよっ!」

「すまん、すまん、ちゃんと返すから!」

 あ、そういえば、目の前ではせっかく焼いたパンをすっかり食べられてしまったんだ。

「だめですよ、ローファスさん。いくら返すつもりでも、人のものを勝手に食べたりしては!食べ物の恨みは恐ろしいって聞いたことないですか?ちゃんとブライス君に謝って、今度からは許可をもらってから食べてくださいっ!」

 あれ?


ご覧いただきありがとうございます。

パンの食べ方ですが、地球のパンの歴史を調べて参考にしてみました。

パンは結構古くから作られていましたが、食パンの歴史は浅いようです。

それからパンに何かをはさむのも歴史は浅いみたいです(ただし、パンっぽいものに巻いたりはさんだりは結構歴史は古いですが、パンっぽいものと言っても甘くないクレープ生地みたいなものなのでパンから除外して考えました)というわけで、決してユーリの行った先の世界の料理が特別遅れているというわけではないです。


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うまみの凝縮されたお肉美味しそう! ジューシーなジャーキーみたいなのかなあ。 想像したらよだれが。 ところでソフトボールくらいのパンって手のひらサイズ? それなら3つくらいぺろりなんじゃないかなあ。 …
[良い点] DV小説なのかコレ?W [気になる点] DV小説だなコレW [一言] ちっとコンプレックスが強すぎる主人公ちゃん ダンナがウゼェW
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