56 MPポーションゲット
「大丈夫ですかユーリさん……僕の説明不足ですね。せめて塩味が付いていればよかったんですが……。保存だけを目的としていて、そのまま食べるには味は……」
はい。
肉臭いです。猪は豚に近いし臭みも少ないと思っていたけど、やっぱり酒で臭みを消したり、醤油や生姜などで味をつけないと癖があります。食べにくい。
まずいけど……。
まぁ火を通してあるし、不味いだけで死ぬようなことはないはずなので……あうう。涙目で完食。
でも、食感は分かった。うん。薄く切ってパンにはさむとおいしそうですよ。角煮の味付けでも大丈夫そうです。
「では、角煮を今から作ります。えっと、朝食べる分と、お弁当として一夜干しにする分、どれくらい作りましょう?」
「全部っ!」
ローファスさんがどーんと胸を叩いてどや顔しました。
は?
「えー、いくらローファスさんでも食べられないよぉ」
と、キリカちゃんが正論。
「ブライスが言っただろう?干し肉にするって。食べられなかった分は干し肉にすればいつでもあの味が……」
何?本気で全部って言ってます?
「待ってください、僕は一夜干しと言っただけですよ?ポーションを用いた肉を干し肉にして保存ができるかと言うのはまだ何もわかっていません」
うんうん。ブライス君のいう通り。
日本にいるときも、角煮の干し肉なんて聞いたことないよ。
「せっかくのユーリさんの料理を、失敗干し肉で無駄にするつもりですか?」
ローファスさんが黙った。
「あの、じゃぁ、こうしませんか?一番大きな鍋に入るだけ作ります。朝食べる分以外は干しましょう。一夜干しにすればお昼と夜と次の朝くらいは問題なく食べれると思いますから、好きなだけ持って行ってください。少しだけ干し肉にしたらどうなるか実験しましょう」
「あ、ああ、一番大きな鍋、うん、そうか。一度に煮るのは無理か、そうだな、分かった」
やっとローファスさんが納得したようだ。
というわけで、肉の形になってからは私の出番です。炊き出しにでも使われるくらい大きな鍋で料理するなんて初めてのことなので調味料の分量にちょっと不安がありますが……。いつも作る量の10倍……いや、20倍はあるかな……。調味料、ポーションはたくさんあるから大丈夫だと思うけど。あ、でも……。
「当たりポーションが足りないかな?」
ハズレポーションは皆の所有物だからいいけれど、当たりポーションだけは材料を出し合うっていうことになっていた。みんなに少しずつ出してもらわないと足りないよね。
あれ?まてよ?
どんなにたくさん食べたって、キリカちゃんの食べる量とローファスさんの食べる量って違うよね?
それなのに同じ本数のポーション出せってなんかすごい不公平じゃありませんこと?
まぁ肉の提供者と言われればそうなんだけど、でもみんな畑で収穫したり料理手伝ってくれたりいろいろしてくれてるからチャラだ。
うん。
「ローファスさん、料理に使うポーションが足りません。他の皆も平等に出し合っているんですけど……」
同じ数を出し合っているとは言わない。平等に出し合っている、これで嘘じゃないよね。
えっと、子供の茶碗と大人の茶碗だと何グラム違うんだったかな。あ、ローファスさんは大人でも普通より大食いだから、えーっと、何倍もらえばいいかな、と頭の中で計算を始めたところ、ローファスさんが小屋の外に出ていき、隣の倉庫から何やら持ってきた。
倉庫には、上級ダンジョンや中級ダンジョンから回収してきた荷物が置かれている。当然盗難防止の仕掛け付きだ。
「ほい」
どさっと大きな箱がテーブルの上に置かれた。
中身は、100本近くありそうなMPポーションだった。
「え?あの、」
私が言っているのはMPポーションじゃなくて、ポーションなんだけど。
箱の中身とローファスさんの顔を交互に見る。
「わりぃ。初級ポーションはここで回収する分で何とかしてくれ。初級ポーションの持ち合わせはねぇんだ」
「え?初級ポーションって、まさか、ここのダンジョンからしか出ないんですか?」
それなのに、この人数でこれだけの量しか確保できなくて大丈夫なんだろうか?
「いや、中級、上級ダンジョンでも出るが、金にならないから誰も回収しないんだ。持てる量にも限界があるからな。ああ、もちろん他にもポーション畑はあるが、こっからは遠い」
そっか。
確かに、もっとお金になるの持ち帰った方がいいよね。
「さらに、俺は初級ポーションじゃぁ、ほとんど意味ねぇからなぁ。自分用に持ち歩いてるのは上級以上のものばかりだ。お前ら子供には飲ませられないものしかない」
ローファスさんのHP思い出す。うん。私なら初級でも十分役立つんですけどね……。まだトータルで15しかないので。飲むと1時間もすれば元気になれます。ううう、がんばってレベル上げなくちゃ。
あれ?でもMPポーションってポーションの何倍の値段って言ってたっけ?
いくら食べる量が多いっていっても、これだけのMPポーションと釣り合うポーションの量って
「ま、これだけあれば次に来る時までにMPポーション料理もいろいろ実験できるだろ?」
あ、そうか。そうでした。そういう役割もありました。
もう、考えないことにします。
ご覧いただきありがとうございます。
にゃはーん。なかなかMPハズレポーションが出てきません。
もしかすると当分無理かな……出したいんだけどなぁ。MPハズレポーションは、あれなんですよっ!あれですってばぁ!
えーっと、コーラ味のMPポーション料理のために、コーラの原料と言われるスパイス買って試してみました。通常のコーラよりスパイスが強い設定ですので……。
う、うん。不味くはない。不味くは。慣れないので微妙な味。でも、作中ではおいしく食べる……あ、おいしいよ、うん。好きな人にんはたまらないと思います。げふん




