55 干し肉
朝食に作ろうと思っていたものは、焼きおにぎりの予定になったからお昼のお弁当用に回すつもりで。
朝は、何作ろう。考えてなかった……。コーラ料理、コーラ料理……。
しゅんとなってうなだれる。
「あ、いや、怒ってるわけじゃないぞ?朝食のつもりっていうと、早起きして作るつもりだったのか?それとも今から作るつもりだったのか?無理しなくていいんだぞ?」
ローファスさんが慌てた口調で話す。
「全然無理じゃないです!えっと、その、せっかくなので、そのお肉使えたらいいかなと思って?」
と、とりあえず言ってみた。焼きおにぎりで急きょメニュー変更しなくちゃいけなくなったとか言ったら、ローファスさん謝りそうだもん。
あ、ブライス君もカーツ君もキリカちゃんもきっとごめんなさいって言うかも。
料理は全然負担じゃないよって、皆がおいしいって食べてくれるのすごく嬉しいんだから、全然謝ってほしくない。
「そうか!肉待ちだったのか!それはすまん!おい、みんな急いで肉の処理するぞ!」
結局ローファスさんは謝った。いやだけど、全然ごめんって感じじゃなくて……。
「特訓の前に処理しておけばよかったなぁ、ブライス。明日は朝から肉が食べられる」
うれしそうです。
ほっ。よかった。
「俺、猪の肉で初めに作ってくれた柔らかいやつ食べたい!」
カーツ君が私の顔を見た。
「角煮?」
「キリカも、あれおいしかった」
そっか。でも、まだ料理の種類いっぱいあるんだけどな、一度出したものでいいのかな?
「角煮?柔らかいやつって、あれかぁ。うん、いいな、たくさん作ってくれ。お弁当にもほしい」
角煮を弁当に?
ええ、だって、朝が焼きおにぎりだから、もともと作ろうと思ってたMPポーション使ったやつをお昼のお弁当用にするつもりだったんだけど……。角煮とは合わないよ……?
「汁が出る系のものは、あまりお弁当に向いてないですよ?」
一応抵抗してみる。
まぁ実際密閉お弁当箱とかじゃないと、汁漏れるよね。授業中にぷぅーんと漂うよね。
あー、肉じゃがの汁が漏れてるなぁとか、隣の席の子のメニューも想像できたりするよね……。
そもそも、密閉お弁当箱どころか、お弁当箱すらないから、どうやって運ぶつもりだろうか。
「うお、そうか!おにぎりみたいに携帯に向かないのか!」
ローファスさんがまたもや、ガーンって顔してます。
うん、何だろう、表情が豊かですね。そして、分かりました。
この人「食いしん坊」です。「食いしん坊筋肉」です。食事制限プロテイン筋肉じゃありません。
「じゃぁ、干して水分飛ばしますか」
ブライス君の提案にカーツ君が大きな声で反対と叫んだ。
「干したら干し肉みたいに硬くなるんだろ?やだよっ!せっかく柔らかくておいしいのに」
「はは。カーツ、大丈夫だよ。カーツは小屋に残るんだから。柔らかいの食べられるよ。僕とローファスさんが持ち歩けるようにって提案だから」
ブライス君の言葉にカーツ君がほっとした顔を見せた。
一方ローファスさんは肩を落とした。
「干し肉かじるの飽きた……」
あーあ。せっかくブライス君の提案をばっさり否定しちゃいました。
ローファスさんって、食事のことになるとなんか途端に残念な人になるんですね。
「今回は保存ではなくて携帯が目的ですから、完全な干し肉じゃなくて、一夜干しでいいんじゃないですか」
う?一夜干しの干し肉?一夜干しっていうと干物を思い出すけど……。
干し肉の一夜干し?どんな感じなんだろう?
「ブライス君、一夜干しの干し肉って?」
「食べたことありませんか?そうですね、昨日処理した猪が一夜干しに近い状態になっていると思いますよ。少し持ってきますね」
持ってこられた肉は、アレだ。肉をお皿の上に放置してちょっとカピカピになった感じと言えばいいのか。柔らかいビーフジャーキーと言っていいのか……。うん、やわらかいビーフジャーキーのが近いかな。
これ、パンにはさんだらハンバーグじゃないけど、ハンバーガーみたいなのできるよね?ローストビーフサンドみたいな雰囲気のものができるかな?
味見してみよう。
目の前の一夜干し干し肉にぱくりとかじりつく。
「あ!」
ん?
ブライス君が小さな声を上げた。
食べちゃダメだった?
「うっ、」
お行儀悪く口から吐き出しそうだ……。ダメ。それ。飲み込まなくちゃ。ごっくんと。
ご覧いただきありがとうございます。
ローファスさんが壊れた……。
甘えている……。
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