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ハズレポーションとアタリポーション

「もしかしてお姉さんは、冒険者登録したばかり?だからここに来たの?」

 こくんと頷く。

 私に話しかけたカーツ君の肩を年長者の男の子が叩いた。

「カーツ」

「ああ、そうだった。ダンジョン内では冒険者への詮索禁止だった」

 ん?また言ったよ。

「ダンジョン?」

 この洞窟が?体育館くらいの空間が広がっているだけのこの洞窟が?

「小さいけれどダンジョンなんだよ、だからね、スライムが出てくるの」

 とキリカちゃんが教えてくれる。

「えいっ!」

 パシン。と、キリカちゃんが黒い悪魔にスリッパもどきを振り下ろす。

「あーん、逃げられた、今度こそ!」

 パシンッ。

 5歳の女の子が一心不乱に黒い悪魔をやっつけようとする姿……。ううう。

 おばちゃんががんばるよ!おばちゃんにまかせときなっ!

 悲鳴なんて上げている場合じゃないっ。子供に悪魔退治を任せるほど、おばちゃんは鬼じゃないからね!

 バシッ、ビシッ、ババーン。

「はっ、そこだ!逃がすか!」

「うおう、なんかお姉ちゃんのスピードが速くなった?」

「すごい、やっぱりお姉ちゃんすごいのっ!」

 時々出てくる小瓶を回収しつつ、黒い悪魔を退治しまくった。

「そろそろ時間だ。出よう」

 と、リーダーなのかな。年長者の子が口を開いた。

「えー、でも、私、まだ2つしか取れてない……」

 キリカちゃんが不満を口にする。

「キリカ、ダンジョンルールだ」

「分かった。体力温存して切り上げること。無理はしちゃだめ」

「そうだ。いい子だ。じゃぁ出るよ」

 リーダーの言葉に皆が洞窟から外に出た。

「洞窟内では自己紹介もできなかったね。僕はブライス。レベルはもうすぐ10になる」

 年長者の少年が洞窟を出たとたんに話かけてきた。

「あ、はじめまして。ユーリです。今日、冒険者登録したばかりで、レベルは1です」

「え?おねーちゃんレベル1なの?キリカはレベル3だよ」

 5歳くらいの女の子ですらレベル3なのね。そりゃ、この年齢でレベル1だったら驚かれるか。

「変わってますね。普通に生活していても、10歳になるころにはレベル2や3にはなっているはずなのに、お姉さんの年までレベル1なんて」

 ブライス君が首をかしげた。

「だったら、普通の生活してなかったんだろ。な、姉ちゃん。この年から冒険者目指すっていうのだって相当珍しいし。俺はカーツ。3歳のころから冒険者目指してる。いつかローファスさんのようなS級冒険者になるのが夢なんだ」

 目をキラキラさせてローファスさんの名前を上げるカーツ。

 もしかして、おっさん冒険者って言ってたけど、ローファスさんは人からあこがれられるような人だったりするのかな?

「えー、普通じゃない生活ってなに?キリカにはわかんないよ?お姉ちゃん教えて」

「馬鹿ッ。病気でずっとベットの上にいたとか、お嬢様で何もしてこなかったけど家が没落しちゃったとか、人に言いたくない事情だってあるかもしれないだろう、聞くなよっ」

 カーツがキリカちゃんの口を慌ててふさいだ。

 なるほど。普通じゃない生活というのは、自分で何もしない……働かない生活ってことか。

 専業主婦だった10年間の自分のことを言われたようで少しだけ傷ついた。

「あの、私、違う国から来たの。私の住んでいた国ではレベルはなくて、ダンジョンもモンスターも何もなくて冒険者もいなかった。だから、いろいろ教えてね」

 国というか世界が違う。

「え?そうなんだ!すごーい!遠くから来たんだね!」

「じゃぁ姉ちゃんは、冒険者にあこがれてこの国に来たのか?」

「キリカ、カーツ、話は家に入ってからすればいい。まずは、いろいろ教えてあげるのが先だ」

 と、ブライス君が私がダンジョンで手に入れた瓶を指さした。

 がむしゃらに黒い悪魔を叩きまくり、出た瓶はとりあえず回収し忘れてはいないと思うけれど。

「本当だ。当たりポーションの見分け方も知らないんだ」

 カーツ君が足元に無造作に置いた瓶を眺めた。

「あたしが教えてあげる!ユーリお姉ちゃん、これがポーション」

 瓶を一つ持ち上げて軽く横に振った。中の黄色い液体がゆらゆらと揺れる。

「これはハズレよ」

 次に持ち上げた瓶の中身は黒かった。

 ああ、これは見分けやすそう。

「これもハズレ。ポーションじゃないの」

 次に持ち上げた瓶の中身も黄色いことは黄色いけれど、ずいぶん薄い色だ。

 しゃがみこんで、他の瓶の中も確認していく。

 黄色い。これがポーションね。黒、黒、透明、薄い黄色、ポーション。

 ハズレポーションはいろいろと種類があるみたいだ。


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