52 HAGUとHAKU
閲覧注意*動物さばく描写あり。苦手な方はお気を付けを
「じゃぁ、ローファスさんは台の上に血抜きした猪を置いてください」
「皮がまだだが、そのままでいいのか?」
こくんと頷く。
「それから、お湯がたくさんほしいんですけど」
「僕が出すよ」
ブライス君が魔法で出すと提案してくれたけれど、首を横に振った。便利だけど。
「これから先、私とキリカちゃんとカーツ君だけでもできる方法でやりたいので。どうしたらいいかな?カマドでお湯を沸かして運ぶしかないかな?」
お湯を運ぶのは結構大変そうだ。鍋じゃなくてバケツ……あ、あった。
猪の乗った台の横に大きめの木でできたバケツがありました。
「なんだ?お湯か?これ使え」
ローファスさんがポケットから何かガサガサと取り出してぽいっと投げてよこした。
「うわぁ!」
急に投げないでください!運動神経弱い子なので!
キャッチ!
したつもりでしたが、コトンと地面に落ちました。うえーん。だって、2つも同時に投げるんだもん。
地面に落ちた色のついた石を拾い上げる。
「火の魔法石?」
赤いのは見覚えのある火の魔法石のようだ。もう一つの青いのは?
「こうして使うんですよ」
ローファス君が私の手から青い石を手に取った。
「バケツを水で満たせ」
と、石に話しかけてからバケツに入れた。
すると、みるみる青い石から水があふれ出て、あっという間にバケツが水でいっぱいになった。
「あれは水の魔法石。そのあとに火の魔法石を入れたらいいよ。水を沸かせと言ってね」
うわー、すごい!なんか、すっごい便利!
「えーっと、バケツの水を63度に温めて」
ぽいっと火の魔法石をバケツに入れる。
「え?63度?何だそれ?」
いつの間にか来ていたカーツ君が首を傾げた。
ん?
もしかして温度の概念がない?
「えーっと、沸騰してなくて、触ると熱いけど飲むとぬるいようなお湯?」
「なるほど。ユーリさんの故郷では一言63度という便利な単語があるんですね」
ブライス君が頷いた。
「さぁ、お湯ができましたよ。この後どうするんですか?」
あ、そうだった!
「お湯をかけながら皮をはぐんです」
全体像は見ない。視線を集約して、手元、目に映るのはお湯そしてひしゃく。なんか茶色の毛が生えてるやつに馬車りとお湯をかける。お腹あたりかな。
……うっ。
ダメ、考えない。
「お湯をかけたところをか?」
ローファスさんがナイフを茶色の毛にあてた。
も、無理。
「ユーリお姉ちゃん大丈夫?お湯はキリカがやるね!」
キリカちゃんが私の手のひしゃくを持って代わりにお湯を汲んでかけ始めた。
「お?おい、ブライス、ちょっとお前もやってみろ、ほら、カーツも」
ローファスさんの手招きに応じ、ブライス君とカーツ君が動くのが視線の端に見えた。
「え?」
ブライスくんの声が聞こえた。
「だろ、格段に皮が剥ぎやすい」
ローファスさんの言葉に、やっとほっと息を吐く。
よかった。聞きかじりの知識だったけど、間違ってはいなかったんだ。
「うわー、本当だ。これなら俺でも一人でできそうだ」
カーツ君の声が聞こえる。
「キリカも手伝ってるもんっ!はい、次のお湯かけますよー」
キリカちゃんの声も聞こえる。
私、一人働いてない。ごめん。もう、目の前が真っ暗になってきた。
気持ちが悪い。また吐きそうだ。
慣れないと。いつまでも子供たちに頼りっきりで年長者の私が動物さばけないままじゃいけない。
ああ、吐く。
いつもありがとうございます。
落ち込んだりもしたけれど、皆様の回復魔法のおかげで、元気になりました。
ツイッターに褒めてボックス設置中@satouriesu
さて、ユーリさんも少し頑張ったよ?そして次回あたりにブライス君のチート炸裂。




