49 目標決めました!
顔をあげると、ローファスさんが小さくうなり声をあげながら、ブライス君の皿を凝視している。
……。
欲しいって顔が言っています。
いまだかつてこれほど食べたいものを必死で我慢している顔を見たことがありません……。
子供たちでさえ、一つだけだよ、って言えばちゃんと一つでおしまいができたのに……。
「ローファスさん、鶏がらスープはいかがですか?焼きおにぎりにかけて食べてもおいしいですよ?」
ちょっとした中華がゆ風っぽくなっておいしいのです。っていうよりは、中華風お茶漬け?
いや、焼きおにぎりは中華じゃないか。まあいい。
ローファスさんが深いさらに焼きおにぎりをいくつか入れて、ちょんとかまどの前に立った。
「ユーリ、お代わりお願いします」
あ。
うん。さっき、ちゃんと並んで、お代わりが欲しかったら私に言ってねと言った。
はい。
言いました。
……。
「ぷっ」
思わず吹き出す。
「どうしたんですか?ユーリさん」
「ううん、何でもないの」
ローファスさんもまるで幼稚園児みたいで。大人の男の人が……しっかりお金を稼げるエリートなのに……。
こんなに素直に言うことを聞いてくれるなんて……。
なんだか、ギャップが激しすぎて……。
それとも、ローファスさんくらいの筋肉隆々の体を維持するためには人の何倍も食べる必要があって、食べることに関しては人一倍必死なのかな?
でも、小屋には確かに子供たちのためにパンとじゃがいもが出てくる自販機みたいなのおいてあげてたけれど、食べることに人一倍必死な人のチョイスした食材には思えないけどなぁ。
……冷蔵庫が無いから、長期保存ができる食べ物となると選択肢が少ないのかな?
でも、干し肉とか、そういう携帯食は存在してるんだよね?
あー、もう冷蔵庫ほしい!冷蔵庫!
昔の冷蔵庫は氷を使っていたんだよね。その氷は氷屋さんで買ってたわけだよね。
……。
ブライス君に見せてもらった氷魔法を思い出す。
うん。決めた!
私の夢っていうか、当面の目標!
とにかくレベル10まで上げて、氷魔法を使えるようにする!そして、冷蔵庫を作るんだ!
あ!氷が作れるようになったら、塩を氷にかけたらアイスクリームも作れるんじゃない?
えへへ。
アイスクリームを食べた時のカーツ君とキリカちゃんの反応を想像して顔がほころぶ。
食べさせてあげたいなぁ。
がんばろう。へへ。
レベル10になるころには少しはお金たまってるかな。そうしたら、ちょっと高価でも砂糖と生クリームと卵と買うんだ。バニラもあるといいなぁ。
にまにま。
「キリカの作った焼きおにぎりおいしいな、そのまま食べてもうまいけど、カーツの手伝った鶏がらスープをかけて食べるともっとうまい」
ローファスさんの言葉に、キリカちゃんとカーツ君が嬉しそうに笑う。
「ローファスさんがとってきてくれた新鮮な鳥の肉があったから作れたんです」
鶏がらスープを飲む。
うん。鳥が無ければ絶対にこの味は出せなかったよ。
「そ、そうか?うん。そうだな!よし、食事を終えたら、また取ってくるぞ!」
「え?」
いや、ちょっと待って。戻ってきたとき、確か猪持ってきたよね?
肉ばっかりそんなにあったって、冷蔵庫がないし冷凍もできないんだから、どうするのよっ!
干し肉にするといっても、干しておく場所もそんなに確保できないよっ!
「いえ、あの、明日から私たち3人になりますし、また今度来た時にでも……」
月に1度は来ると言っていたから、それで十分だよね。
「そうか?遠慮することはないぞ?」
いいえ、遠慮します。遠慮させてください。
私とカーツ君とキリカちゃんだけになったら、さばくのも大変です。明日の朝にはブライス君はローファスさんと一緒にいなくなるって覚えてるのかな?
パクンと鶏肉を口に入れる。
臭みもない。しっかり血抜きとかしてくれたんだろうなぁ。内臓とかもどう処理するのかわかんないけど……。
「ブライス君が上手にさばいてくれたからおいしい」
ブライス君にお礼が言いたくて顔を見ると、ふっと頬が少し赤くなってた。
ほのぼのサイド~。
本日二度目の更新です。*一度目は日本側なので読み飛ばしても問題ないです*
さて、ユーリがやる気を出しました。
レベル10まで上げるんだ!冷蔵庫欲しいんだ!
うん。風呂のために!とか米のために!とか、異世界行くとさ、日本で当たり前にあったものを手に入れることがどうしても目標になりがち。ユーリはまず冷蔵庫が欲しくなったようです。




