48 おかわり!
冒険者養成学校はどうか分からないけれど、学校に通っていないキリカちゃんやカーツ君は計算とか学ぶ機会はないよなぁ……。うん。教えらっることがあれば教えよう。ハズレポーションを集めたらきっと何十どころか何百とかそういう数の計算も必要になってくるはずだ。1本いくらでそれを何本売ったらいくらになるかというのも……。
ポーションはパン1個という簡単な計算だ。ハズレポーションがどれくらいの価値で取引されるようになるかわからないけれど……。この子たちが騙されないように足し算と引き算と掛け算。
割り算は、まぁ、うん。いいや。計算が嫌いじゃないようなら教えよう。私は嫌い。特に余りがある割り算。
「そうだなぁ、ユーリの料理を食べた時に比べると、10分の一くらいの補正値効果かな」
え?
「十分の一、ですか?だとすると、僕らが食べたら補正値はプラス1になるんでしょうか……すぐに確認したいところですが、早くて夜中ですかね」
「私の作った料理の方が効果が高いんですか?」
私は驚いてるのに、他のみんなはたいして驚いている様子もない。
「まぁ、ユーリ以外が作ったとしてもある程度の効果は期待できると分かったんだ。すごいぞ」
「引き続き研究は必要ですね。効果の違いが、完成度によるものなのか、スキルレベルによるものなのか、それか生まれ持ったギフトによるものなのか……」
そういうことですか。
効果の違いはいくつもの理由が考えられるってことか。
そういえば、ローファスさんがブライス君の魔法をすごいと言っていたし。魔法とかそういう不思議な力には個人差があってしかるべきってことかぁ。
「そうですね、皆で焼きおにぎりを作りませんか?そして明日の朝、誰が作ったものがどれだけの効果があるのか確認しましょう」
ブライス君の提案に、みんなが頷いた。
「え?」
明日の朝も焼きおにぎり?
えっと、明日の朝はパン食べるつもりだったんだけど……。
まぁいいか。パンを使ったのは、お弁当にすれば。
人数がいる間に実験できることはした方がいいもんね。
「はぁー、うめぇなぁ。これ、酸っぱくて甘い料理初めて食べた」
ああそうか。砂糖も貴重だから甘いを料理に取り入れることってあんまりなさそうだもんね。
ローファスさんがそそくさと席を立ち、鍋からどっさりと皿に甘酢餡を盛り付けている。
思わず腰を浮かしてしまう。
お代わりなら、言ってくれれば私がよそうんだけどっ、っていうか、ごめんなさい食事中に席を立たせてしまって……。
と、ちょっとだけ手に汗がにじむ。
主人は一度テーブルに着くと食事が終わるまで席を立たなかった。醤油、マヨネーズ、お代わり、お茶、……必要としている物をタイミングよく出すのが私の、主婦の仕事だと言っていた。
預かった子供に食事を食べさせていて、主人の茶碗が空になっているのに気が付かなかったことがあった。
「子供を持つのは当分無理だな。子供の世話で、家事がおろそかになるようじゃな……」
凍り付くような声を思い出す。
だめ。ここでは逆に手を出しすぎてはダメなのだ。
自立した冒険者に必要以上の手助けは……。
私は彼らと同じ冒険者だ。皆、同じだけ働いている。
「キリカもおかわりー!」
「待ってくれよ、俺も、俺も、ローファスさん食べすぎだよっ!」
我先にと鍋に向かうみんな。
あ、これ、危ない。
「並んでください。順番です。それから、お代わりが欲しい人は私に言ってください!」
うん。別にこれは世話を焼くわけじゃないよ。危険だからね。みなの安全のため。
「じゃぁ、キリカちゃんどうぞ、次はカーツくんね。ローファスさんはもうおしまいです。さっきたくさん食べましたよね?」
ガーン。
いや違う。
ガガガーーーーーンッって擬音が聞こえそうな顔をローファスさんがした。
え、そこまでショックを受けること?
「ブライス君はお代わりいかがですか?」
声をかけるとブライス君が皿を持ってきた。
「ありがとうございます。いただきます。ユーリさんの料理は本当においしくていくらでも食べられます」
にこっと笑うブライス君。
「ありがとう」
顔から池にダイブしてレンコンを取ったかいがあったー。
……レンコンと言えば、これから先どうやってレンコン掘り出せばいいんだろう。
レンコンってじゃが芋みたいに長期保存できないんだよね……買ってきたら長くても2週間くらいしか保存できなかったはずだ。
って、それもラップにくるんだり冷蔵庫に入れたりしてだから……。
冷蔵庫もないと、何日持つのかなぁ。やっぱり食べたいときに収穫するしかないか……。
干しレンコンも長期保存は無理なんだよね……。
「うっ、ううっ」
何の声?
いつもありがとうございます。
もう、おわかりだろうか……。
ローファスさん、かなりのくいしんぼうです。
食いしん坊と言えば、3月15日に「くいしんぼう巫女と猫竜王……うっ、何の話でしたっけ?
いやぁもう、なんていうか、私……残念な人書くの得意です。




